関西電力の役員ら20人が福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(故人)から多額の金品を受け取っていた問題をめぐり、関電の会見が2日午後2時から始まった。受け取った金額の総額は3億1845万円で、そのうち3487万円相当が未返却だったことがわかった。また取締役2人の受領額がそれぞれ1億円を超えていた。岩根茂樹社長と八木誠会長が説明する。森山氏側への便宜供与の有無や経営陣の進退が焦点となる。
300人以上の報道陣が待ち構える中、岩根社長と八木会長の2人は、緊張した表情で登壇。岩根社長が金品受領問題について説明を始めた。
関電は9月27日の会見で、社内調査の結果として、平成23年から30年にわたって20人が3億2千万円相当の金品を受け取っていたと発表。しかし、受領者の氏名や金品の内容、受け取った時期について個人情報を理由に明らかにしなかった。
政府や株主である大阪市などから批判を浴び、関電は報告書を原則すべて公表すると方針を転換。2度目の会見をすることが決まった。経済産業省から高浜原発以外についての報告が求められており、新たな調査委員会の設置についても方向性を示す。
岩根社長と八木会長はいずれもすでに続投を表明しているが、進退についての言及が注目される。
【PDF】関西電力が公表した報告書
【一覧】役員・幹部20人の受領額
《会見場には午前中から続々と報道陣が詰めかけ、午後1時半ごろには約300人にまで膨れ上がった。午後1時45分、関電の広報担当者が報道陣に社内調査委員会の報告書の配布を開始。そして、午後2時2分に八木会長と岩根社長が神妙な面持ちで会見場に姿を見せた》
《八木社長、岩根社長とも紺のネクタイをしめ、いずれもダークスーツに身を包んでいた。会見には岡田達志常務執行役員、池田雅章広報室長も同席。4人はカメラのおびただしいフラッシュの光を浴びながら深々と一礼。起立したままの状態で、まずは岩根社長が口を開いた》
岩根社長「皆さまには大変お忙しい中、お集まりいただきまして申し訳ございません。このたびはお客さまや社会の皆さまからの信頼やお気持ちを裏切り、多大なご心配やご迷惑をおかけしてお騒がせしましたことを改めまして深くおわび申し上げます。
《4人が再び一礼》
岩根社長「それでは着席させてただきます」
《4人は着席。引き続き岩根社長が説明する》
岩根社長「今回の件につきましては9月27日にご説明させていただきましたが、個人情報に配慮した内容となり、なぜこのような事態となったのかをしっかりとお伝えすることができず、皆さんに疑念や不安を与えることになり、情報開示の観点から大変反省いたしております。本日は可能な限り、詳細に説明したいと思っております。ご説明におきましては、私に加えて代表取締役会長の八木も同席させていただきます。それではお手元の報告書にそって説明させていただきます。一部、情報に支障がある部分をマスキングしていますことをあらかじめご了承願います」
《岩根社長はその後、20ページ超にわたる報告書の説明に入った》
岩根社長「まずは、本件の調査概要に関して、ある特定の人物と申し上げていた高浜町の元助役、森山(栄治)氏と当社の関係について申し上げます。森山氏と当社との過去の経緯としましては昭和50年代に高浜原発の誘致などについて、地元の有力者である森山氏との関係がありました。各人が我慢を重ねて森山氏に助言を受けていた。このような状況のもと、どのようなやりとりがあったのかご説明します。
それでは1ページ目をごらんください。
調査の目的ですが、吉田開発への国税当局の査察を端緒とし、森山氏から多額の金品を受領していたことが判明したので、調査を開始しました。
《報告書の調査態勢などの説明が続く》
無関係の社内役員3人で構成される調査委を設置し、調査を実施することにしました。
金品受領と返却状況については、森山氏と接点のありうる職員に、以前の7年について金品の受領返却状況を調査しました。私の説明の不十分さに加え、金品の受領期間と調査期間が7年間であるかのように報告したことを訂正させていただきます。
叱責や罵倒に加え、家族に危害を及ぼすとも示唆され
岩根社長「まずは金品の受領結果について、別添えの資料をごらんください。調査対象の26人を記載しております。このうち20人が金品を受け取っており、その返却状況をお示ししております。金品につきましては、合計約1億4千万円、商品券、米ドルを合わせると、およそ2億2千万円になります。物品については金、スーツなどとなっています。一定の金額換算をした上で合計すると、約3億1800万円、これが人数と合計になります。
前回の会見では、儀礼の範囲を除いてすべて返却しているとしましたが、受領しているものが相当の金額であり、良識の範囲を超えることから整理したいと考えています。しかし記載している商品券約470万円につきましては、ご遺族と面談できない状況にあり、お返しできていない状態です。誠に申し訳ありませんでした。引き続き返却する努力をしてまいります。役員6人につきましては、本日、私からの説明は省略させていただきます。
また、これら関係者がどのような対応をしたのかに関しまして、報告書に基づいて説明します。まず金品を渡された状況について、面談や会食、郵送、手土産や昇進祝いなどで受け取っています。森山氏が多額の金品を渡す狙いについて、自分を大きく見せようとする独特の権威誇示や、人的ネットワーク維持などと感じておりました。金品を渡された者は、受け取る理由はないと考え、返却を申し出たが、「ワシを軽く見るなよ」などと激高されていました。
さらに、さまざまな叱責や罵倒に加え、私から詳細を申し上げるのは差し控えるが、家族にまで危険を及ぼすことを示唆することもありました。受領した金品をお返ししようとしても、何とかお返ししようとする努力をしても、再度金品が送られてくるといった特異な状況もありました。
現時点では20人が大部分を返却しておりますが、長期間にわたり保管していた点について、コンプライアンス上、不適切であったと考えております。
次に、森山氏への情報提供、また吉田開発への工事発注プロセスについてご説明します。
調査報告書には記載しておりませんが、吉田開発の平成30年の売上高は22億円となっております。このうち、当社からの直接発注は2億5千万円で、総合建設会社などを通した間接発注は10億6千万円となっております。
まず情報提供につきましては、原子力発電所を運営するにあたって、立地地域のご理解なくては、また適正な価格なしでは、円滑に運営できないと考えております。その上で、工事計画などの情報について、個別企業にお知らせしておりました。森山氏にも、工事概算額をお伝えすることもありましたが、地域重視の姿勢をお示ししたいことから、問題ないと考えておりました。
吉田開発への発注プロセスにつきましては、原子力事業本部による工事発注は社内ルールに基づき行われておりました」
前例踏襲の傾向があった
岩根社長の説明が続く。
岩根社長「一方で、森山氏から受領した金品の返却プロセスについてのコンプライアンス上の評価について、調査報告書では、返却が困難との事情があったとはいえ、不適切との評価は免れないと指摘されました。返却が、各個人の判断に委ねられており、会社としての決断ではなかったことは、非難されるべきだと思います。
また、吉田開発への発注額の『工事概算額』を森山氏に開示したという行為は、契約交渉に悪影響を与える恐れがあります。ただ、これが森山氏が提供した金品の見返りとして行われたとは認められていません。
吉田開発への工事発注額も、社内ルールにのっとって、適切に行われたと考えています。
今回の問題が起きた要因については、返却困難な事情があったとはいえ、各個人の管理下に置くことに、コンプライアンス上の問題があるという認識が甘かったことがあります。今回の問題については、各個人で対応せざるを得ないという認識がありました。前例を踏襲するという傾向があったと思います。
再発防止対策は3つあります。1つは、対応困難な状況に対し、組織として対応する。2つ目は、役員層の意識を向上させる。そして3つ目は、現状やむなしという前例踏襲主義の企業風土の改善です。
ただ、こうした再発防止対策を展開中の昨年10月、私が各役員に今回の問題についてコンプライアンス部門に報告するよう求めたところ、配電部門においても森山氏と接点があるという事実がわかりました。3人が、計250万円の商品券を受領していました。これについては、210万円を返却し、1人がもらったスーツも返却しました。
会社として、2つの課題があると考えます。事案の重大性をかんがみ、さらに類似の事例がなかったかを調べる必要があります。また、取締役会に報告書を諮らなくてもよいと判断したことは、ガバナンス上の欠如がありました。その改善も必要です。
第三者委員会を立ち上げ、検証します。年内をめどに報告書をまとめて参ります」
岩根社長と八木会長は辞任の意志示さず
《岩根茂樹社長が説明を終え、八木誠会長が発言を始めた》
八木会長「八木でございます。このたびはお客さまや社会の信頼を裏切り、多大なご迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます。これまで十分な情報開示ができておりませんでしたが、今回は可能な限り情報を開示し、皆さまの不安を払拭したいと考え、私も同席させていただきました。原因究明、再発防止に全力を尽くすことが私の最大の責務です。本日は誠心誠意お答えします。よろしくお願いします」
《八木会長のあいさつを終え、会見は報道陣からの質疑応答に移った》
--岩根社長、八木会長、お2人の進退についておうかがいします。お2人は今回まさに当事者ですが、辞任するお考えはありますか。また、関西経済連合会や電気事業連合会の職はいかがでしょうか
岩根社長「大変ご迷惑、ご心配をおかけしたことを深くおわび申し上げます。私としましては、今の状況を少しでも原因究明、再発防止を行い、少しでも会社の信頼を上げられるように、先頭に立って経営責任を果たしていきます。電気事業連合会も課題が山積しておりますので、各社の社長さまと相談させていただきますが、各社の社長さまと今後も協力して課題を解決していきたいと考えております」
八木会長「お客さまや社会の皆さまからの信頼を裏切ったことを深くおわび申し上げます。今回の件を厳粛に受け止め、すべての膿を出し切るため、原因究明と再発防止対策を進めることが最大の責務です。今後も経営責任を果たしていきます。関経連につきましても、ご相談の上ですが引き続きやってまいりたい」
--今後新たな調査結果が出ても、ご進退への判断はされないということか
岩根社長「新しい調査委員会でわれわれのこれまでのプロセスにつきましても判断されるかと思いますので、その結果を踏まえたいと思います」
八木会長「社長と同様です」
--原発マネーの環流がなかった根拠を説明されていますが、受け取った人たちというのは、吉田開発のお金が森山氏に流れていると気づくことができたと思います。報告書では工事の概要はマスキングされております。また前回と同様にはっきりとものを申されていないと感じます。原発マネーの環流がなかったと改めてお話しいただきたいです
岩根社長「特に原発立地地域の地域共生活動につきましては、工事受注において安全と品質の確保を重要課題としております。地元の企業がわれわれの工事を受注できるように、一定の社外に発信しても支障がないと判断した情報は、問い合わせがありました場合、工事の概算額や規模感などをお答えすることになっています。
ただし、精度の低い概算額や市況を踏まえた査定を鑑みてお伝えしております。競争入札と市況のいろいろな推移、トレンドを反映したものでございます。工事の発注プロセス、金額は適性と評価しております。
地元への発注という件に関しましては、常に地元から要請されていること。現在、高浜原発ではさまざまな工事を行っておりますが、地元に発注できるものは、可能な限り地元に発注しております。高浜に関しては、敷地造成、土砂を田んぼに捨てる工事など、実際の工事が品質、価格とも満足できるのは吉田開発含め、ほぼ2社でございます。そのうち1社は浚渫(しゅんせつ)と海回りが中心でございまして、そうした中で競争に勝っていくのは吉田と考えております。他の方から工事の問い合わせを受けた場合も、規模感などをお伝えしております」
岩根社長「就任祝いのお菓子の下に金貨が入っていた」
--今までのご説明を聞きますと、あたかも森山氏という特異なキャラクターを持った人によって、関電が被害を被ったというような印象を受けます。関電内部からは自浄能力を欠いているという声もあります。なぜ、内部から今回の問題を指摘する声が岩根社長のもとに届いていないのでしょうか
岩根社長「このような全貌について、私は全く知りませんでした。森山さんの名前は知っていましたが、このようなことをされているということは存じ上げていませんでした」
--税務調査前には知らなかったのか
岩根社長「私自身は(森山氏に)一度会い、その際に金貨をいただいております。就任祝いのお菓子の下に金貨が入っておりまして、原子力事業本部の人間に聞きますと、なかなかすぐには返せないということで、会社の金庫に保管してもらいました。その際、そういう人間は社内に数人かな…と思っていましたが、そのタイミングで全貌を把握できなかったのは申し訳なく思っています」
--報告書について。受領した金品について「預かり」という書き方になっています。受け取ったものについて、「預かり」という項目で書かれている理由はなぜでしょうか
岩根社長「少なくとも社員にヒアリングをする限り、受け渡されたものについて自ら費消するつもりもなく、どこかで返したいというのが全員の気持ちでした。返す努力をしたが恫喝(どうかつ)されて返せないという中で、貸金庫を借りたり、自宅に保管したり、私有物とは違う形で保管しながら返す努力をして、20人のうちのほとんどは返しておりますので、自らこれを取得する意図はなかったと思っています。
--金品の返却の仕方は誰にどのように返しているのでしょうか
岩根社長「返し方は原子力の役員が森山氏に直接お支払いして、領収書もいただいております」
--これだけ明白な不正が行われていたということを今日お認めになったと思うのですが、経営者としての倫理的責任はあると思います。現時点で現職にとどまる理由は何なのでしょうか
岩根社長「さまざまな課題があり、非常に大変な時期です。私は少しでも状況の打破のためにお役に立てないかと思っております」
--昭和50年以降、関電には9人の社長がいた。八木さん、岩根さんが就任祝いをいただいて、それ以前の7人が受け取っていないことになっている。なぜお2方だけが森山氏から高い評価を受けているのかが分かりません
岩根社長「今回の調査については、平成23年からの7年間に在籍している役員を調査しています。森(相談役)には接触はないと確認しておりまして、それ以前については、新たな第三者委で調査してまいりたいと思います」
--今回の事態、法的問題はないといわれているが、(民法上の)善管注意義務違反にはならないのでしょうか。官製談合を仕切っているような方から金品を受け取るということが善管注意義務違反に当たらないと判断した理由が分かりません
岩根社長「調査してまいりましたが、社員は困惑していましたし、金品を返すための努力に腐心していました。返そうと思ってもさらに恫喝(どうかつ)されていました。個人で保管しながら、返す努力をしてきたという理解です。重大なコンプライアンスの問題はあると思っています。新たな第三者委でさらに調査していきたいと思っています」
--関電は「社会やお客さまに尽くす」とうたう会社ですが、森山氏みたいな方と付き合うことが、社会やお客さまに尽くすことになるのですか
岩根社長「それは申し訳ないのひと言です。森山氏のこのような状況を全く知らずに私自身が会ってしまっていた。会った後の対応が間違ってしまったと反省しております」
岩根社長「金品受領と吉田開発への発注に関係はない」
《質疑応答が続く》
--吉田開発から役員・社員の皆さま、吉田開発の社員が随行して金品を受領していた。そもそも元請けを通す前に、下請けに対して事前に、概算額などを伝えて受領している。これは便宜供与に当たらないのか
岩根社長「おっしゃる通り。不適切だが、関係のない形でも金品(受領)は行われていた。この金品と直接は関係ないと判断している。吉田開発と森山氏が一緒に来ていることにつきましては、吉田開発の話をするときは、吉田開発はおりませんでした。発注の関係と、金品の関係は切れていると、仮に金品の授与がなくても、吉田開発に仕事がいき、同じような仕事をしていたと受け止めている」
--結果として金品を受領し、スーツも費消している。贈収賄のような構図。それでも社長は、調査の過程で、違法行為という認識にならなかったのか
岩根社長「スーツにつきましては、単価が高くなっているが、もともとは仕立券でした。たしかに費消しているが、これだけの金額になると甘いと言わざるを得ない。今後、ご家族に返していきたい」
--吉田開発はこれだけ受注、下請けに入っている。これまで、他の企業と契約を結ぶ前に、概算額や工事の規模など、吉田開発とのやり取りは、ほかの企業でも同じようにしていたのか。それとも、吉田開発は特別扱いなのか
岩根社長「他の地元の有力者から聞かれた場合でも、お伝えしていると聞いている。だが、それでも特別だったと受け止めている」
--概算額については予定価格に当たる。工事の規模感についても、他の会社に伝えているのか
岩根社長「概算額とは、非常に粗い、精度の低いもの。概算額と契約額の差がかなり大きいものもある。こういう形の開示をすることがよかったかどうかを、さらに調査していきたい」
--他にも教えている会社があるのか
岩根社長「ある種は教えているものもあるということです」
--(原子力事業本部が)本店の(大阪・)中之島から(福井・)美浜に移った。八木会長は金品受領を認めているが、原子力事業本部が立ち上がった後からこうしたことが起こったのか。それとも従前からあったのか
八木会長「私が原子力事業本部の役員に就任してから、森山氏との接点ができた。当時の感覚では、年に数回お会いする程度だった。本部長を離れて、森山氏とお会いすることは一度もなかったが、この間にエスカレートしているという感じはあります。おそらく、東日本大震災で国の規制が高まり、そうしたことが背景にあるかと思います。それ以前にさかのぼり、前任者の時代については、私は承知していない。私が対象者の一人で、過去をさかのぼると、こういう接点があり、平成18年~22年にお預かりしたものを申告した。それ以外は今後の調査で確認していきたい」
「地元に影響力のある方で過剰に反応してしまった」
《質疑応答はさらに続く》
--今回金品を受領した方は、岩根社長以外は、ほぼ全員が美浜原子力事業本部の経験者でした。その期間は、主に八木会長の社長時代であったわけですが、なぜこのような問題の対応を個人の判断に任せていたのでしょうか。ガバナンス上、大きな問題とはいえませんか
八木会長「私が(美浜原子力事業本部)に在籍中、森山氏と接点がありました。社長になってからは、一度もお会いすることはありませんでしたが、森山氏からの金品の受け渡しがこれほどエスカレートしていたとは認識していませんでした。そのような背景から、問題を会社が是正すべきという考えに至りませんでした。この部分は反省しております。
受け取った各個人が、受け取りたくはなかったけれど、大きな影響力を持つ人物の機嫌を損なってはいけないという思いで、悩みながら受け取っていた。ただこれは会社としてリスクをとって、問題に対応する仕組みをきちっと作るべきだったと思います。彼らには申し訳ないと思っています。彼らは辛かったでしょう。会社として、すべての膿を出し、会社としてリスクを背負って、再発防止策を講じる必要があると考えています」
--今回1億円以上を受け取っていたのは豊松原子力本部本部長と、鈴木同副本部長でした。現地で決済する最高責任者に、森山氏からのアプローチが集中していたように思えます。森山氏はやはり、人を選んでこのような行為を行っていたと考えられますか
岩根社長「こういった上位の人間に、森山氏が接近していたという認識はあります」
--会長、社長の両名にうかがいます。関電が今回のような対応を行ったのは、森山氏が有力者だからこそだったとのご説明でしたが、同様に地元に影響力がある方は他にもいたのではないでしょうか。彼は一体、どのような影響力を持っていたのでしょうか
岩根社長「過去を含めて検証する必要がありますが、強い恫喝(どうかつ)が担当者にずっと続いていました。彼に反対をされれば、原子力行政の推進がうまくいかないとの考えがありました。そのような状況を恐れ、深い関係になっていったのではないでしょうか」
八木会長「森山氏には、高浜原発3、4号機の誘致や地域のとりまとめで非常に大きな協力をいただいた。そのような方が機嫌を損ねると、高浜町全体が、原発行政に反対するリスクがあると考えました。原子力事業は、地域の理解がなければ成り立ちません」
--皆さんは関電という非常に大きな会社の役員であり、森山氏は一個人に過ぎません。警察に解決を要請するなどの対応もとれたのではないでしょうか
岩根社長「森山氏との関係においては、会社のガバナンスの外にあり、その部分だけが前例踏襲で、個人ベースで引き継がれていました。申し訳なく思っています」
八木会長「森山氏は、地元に非常に影響力ある方でした。私たちが、彼の動きに非常に敏感であり、過剰に反応してしまった部分もあるかもしれません」
「ほかの事例なら通報していたが森山氏の影におびえてしまった」
--報告書には森山氏の発言で「お前の家にダンプを突っ込ませる」などとありますが、森山氏の恫喝(どうかつ)に従わざるを得なかったのでしょうか。森山氏の何におびえていたのでしょうか
岩根社長「やはり森山氏につきまして、会社全体のガバナンス、コンプライアンスは全社として進めておりますが、そこのところだけが前例踏襲で個人ベースで続けてこられました。会社のガバナンスが入っていかなかった。それぞれの森山氏の担当がどう思って、会社全体のガバナンスではなく自分が頑張らなあかんと思ったのか」
八木会長「本当に地元に影響力のある方で、地域における発言力も非常に大きかった。われわれは高浜での原発運営をやってまいりましたが、そういう意味ではこの方の反応、動きを非常に敏感に感じていたのは事実です。過剰に反応している面もあるかと思いますが、現実問題として高浜地域での影響力が大きかった」
--森山氏の恫喝への対応に苦慮していたのか、例えば森山氏に関連する背景に遠慮があったのかどちらでしょうか
岩根社長「私は原子力事業本部長と本部長代理を務めている際、お会いする機会がありました。必ず手土産を持参しておられ、当然受け取ってはいけないとお断りしましたが、なぜ受け取らないのかと激高された経験があります」
八木会長「連綿と先輩から後輩へ引き継がれてきました。担当になった者は非常に厳しい恫喝をされた、と。過去こういうことがあったと先輩から聞かされて、森山氏の影におびえ、担当の中にはこれ以上、対応できないと病気になった者もございます。そういった両面から、自ら森山氏側に入ってしまったことはあるかと思います」
--いかに前例踏襲があり個人の対応があっても、ダンプカーの発言などは明らかに刑法違反です。なぜ警察に通報しなかったのでしょうか
岩根社長「これは担当していた個々人に聞いてみなければいけませんが、やはり森山氏の案件は会社の中で特別だと、担当の中で続いておりました。森山氏の影が強くあり、そういう判断になった、と。ほかの事例でありましたら通報していましたが、森山氏の影におびえてしまったことがあるかと思います」
八木会長「この方の影響力を考えると、われわれもかなり敏感になっていました。この方を怒らせてしまう、イコール原子力事業運営がスムーズにいかないという思いが強くありました。私をはじめ、対応していたみんなが強く思っていたという認識に尽きます」
--森山氏は国会議員に通じていたとありますが、国会議員とはどなたか
岩根社長「それは伝えられている、とありますので特定の国会議員ではなく、これは伝聞であります」
--担当者が森山氏の恫喝で体調を崩して半身不随になったという記載がございますが、かなり長期間、複数の方が恫喝に屈していたということですよね。それでも訴えなかった理由としては、八木会長がおっしゃった、原子力事業推進にあたり影響力を考えると訴えることができなかったという理解でよいでしょうか
岩根社長「反対に回すと地域での原子力事業の理解活動に大変な支障が出ると思い、森山氏にお付き合いしつつ、発注工事には適正を保っていこうとしたと思っています」
--会社内での共有はできていなかったのでしょうか
岩根社長「私はこの話は知りませんでした。どの程度、伝聞で社員に伝わっていたかはわかりません」
--岩根社長の処分が八木会長よりも軽くなっています。どういった理由で処分の重さは変わったのでしょうか
岩根社長「1つは受領金額の問題ですが、個人の問題にして、組織的な対応ができなかったのは私の責任は重いと考えています」
--今後、岩根社長の受領額が変わる可能性はないでしょうか
岩根「全くありません。美浜原発の事故の再発防止で安全推進室にいた時期もありますが、本店の内部におりましたので」
岩根社長は「(金品の出所は)考えが及びつかなかった」
--幹部の処分に差があることについて、金額のみが理由で、倫理的責任は入っていないということなんでしょうか
岩根社長「(報告書の)上の3人は組織の長です。今回の問題を組織の問題として取り上げなかったという処分も入っています」
--八木会長、岩根社長の2人に聞きたいと思います。改めて表を見ると、おびただしい金額のものが記載されているわけですが、こういった金品を特定の個人が皆さんに渡すとことについて、どこからお金を持ってきていると認識していたのでしょうか。関電が吉田開発に工事を発注しているから、皆さんのところにお金が回ってきているのではないかという考えはなかったのでしょうか
八木会長「私は金品の出所がどこにあるか、全く承知しておりません」
岩根社長「それについては考えが及びつかなかったところでございます」
--報告書には吉田開発と森山氏との関係がはっきりと書かれていません。何の確認もできないまま親密という認識を持っていたのですか。顧問の肩書は把握されていなかったのですか
岩根社長「森山氏と工事の話をするときは吉田開発はいませんでした。担当は吉田の話と森山氏の話については切れていると思っておりますし、吉田に概算見積もりや工事計画を出しているのは他社と同様です。吉田への発注額が増えているのは、高浜(原発)の安全対策工事で、敷地造営などの工事が増えているからです。そのような形で吉田への発注額が増えていると認識しています」
--人権教育は具体的にどういう教育を受けておられたのですか
岩根社長「森山氏とは25年前にも一度会いしたことがありました。私は京都支店におりまして、人権教育という形で会っています。内容については正直あまり記憶が出てきませんが、広く人権の問題の重要性についてお話しされたように思います」
八木会長「人権全般に対するご指導をいただいたということです」
--若い社員を森山氏の秘書として付けていたというような事実は把握されているのでしょうか
岩根社長「秘書という形ではありませんが、かなり難しい方なので、窓口となる社員を決めていたのは事実です」
--吉田開発の発注プロセスについて報告書の中で調査されているが、それ以外の企業を調査しなかった理由は何なのでしょうか
岩根社長「今回の問題を受けた形なので、吉田開発の発注プロセスが適切だったかということを全て検証させていただいたということです」
--子会社の関電プラントで森山氏を顧問という形で有償で雇っておられたのはなぜなのでしょうか
岩根社長「申し訳ございませんが、森山氏が関電プラントの顧問をしていたのはごく最近まで知りませんでした。これについては、今後の第三者委の中で徹底究明してまいりたいと思っています」
--関電プラント以外の子会社では顧問契約を結んでいないでしょうか
岩根社長「グループ会社についてはまだ把握できないところが多いですが、現段階では私自身は把握しておりません」
利益相反の問題は今後しっかり調べる
《会見開始から約1時間半が経過。岩根社長、八木社長ともに、報道陣からの質問に対し、メモを取ったり、時折うなずいたりしながら、回答を続けている》
--森山氏は関電プラントで顧問を務めていた。双方の企業で顧問をしていたということになるが、どう感じているか
岩根社長「利益相反の問題がないか、今後しっかり調べていきたい」
--長年、関電から情報が提供され、そして森山氏からの金品受領。一歩間違えれば危険な状態だと思わないか
岩根社長「不適切な部分は多々あったと思います。その背景について、次の第三者委で判断していきたい」
--会長と社長はいつ返却したのか。20人のうち、8人を公開しない理由は
岩根社長「私は平成30年2月。査察の話を聞いて、今なら返せるかと思い、問い合わせました。そこで、今なら受け取ってくれそうだとのことで、私の分を含めて返却しました。公開については、役員、執行役員に限った」
八木会長「私も平成30年2月です。私は、原子力事業本部にいた、18年~22年の間にいただいた。商品券は返したが、お預かりしていたものは、その当時お返しすることがかなわず、社長になってからもお預かりしていた。お会いする機会はなく、自ら接点を持つのもよろしくないと思い、原子力事業本部の人間を通じてお願いしておりました。そして、その頃に返せそうだと話を聞いて、返却させていただいた」
--8人がマスキングされている詳細な理由は。加えて吉田開発への発注額は
岩根社長「役員、執行役員、発電所長を除いた者です。個人名の開示を控えさせていただきました。発注額については、121件の合計をただいま持っておりませんが、少なくとも、吉田開発への発注額の推移は30年が2億5千万円。29年が1億4千万円。28年が1億2千万円、27年が9900万円、26年が3600万円、25年が300万円。ゼネコンが入ったものもあり、そこの適正も調査していきます。
ゼネコン発注分については、なかなか全部を把握できておりませんが、だいたい過去5年間は、ゼネコンを通して吉田開発に落ちている間接発注のものが、最少6億4千万~最大21億円。26年6億5千万円、27年8億4千万円、28年10億円、29年21億円、30年10億6千万円になっている」
--受領した金額が1億円というものもあるが、普通の数字ではない
岩根社長「その点は豊松、鈴木からヒアリングしていないので、お答えできません。申し訳ありません」
--関電の社員の中には、事情を知らなかった方もいる。今回、調査対象ではなかった人から申し入れはあったか
岩根社長「この調査報告書を出してから、もう一度コンプライアンスの徹底を命じ、改めて調査もしました。そこで電力技術センターから3件、報告がありました。次の第三者委で、発注プロセスを調査する」
--会長はなぜ前回の会見に出席しなかったのか
八木会長「関西電力の基本的な会見は社長が担当することになっております。わたしはどちらかというと、半分社内、半分社外。そういう意味で、会社の会見は社長がやるというのが基本的な考え方です。しかし、先日の会見が不十分だったということで、また今回のことを厳粛に受け止めまして、代表者という立場で出席させていただいた」
「前回会見は十分な準備できず不信感を与えた」
--八木会長は、前回の会見では、説明しなくてもよいとの判断があったのですね
岩根社長「前回の会見については、申し訳なく思います。どういうスタンスで会見に臨むか、準備できておらず、不信感を与えてしまいました。十分な整理ができていませんでした」
--経済産業省も、森山氏のような人物の機嫌を損なうべきではないという考えだったと思いますか
岩根社長「私から、経産省殿の考えは申し上げにくいと思います。ただ、森山氏のような人物がいるとは、経産省側に申し上げたことはありません」
--官邸も知らなかったのですか
岩根社長「私からは、そのような話をしたことはありません」
--森山氏からの恫喝を受け、半身不随になった社員もいたと報告書には書かれています。そうまでして原子力の推進にこだわる理由は何なのでしょうか
岩根社長「東日本大震災以降も、関電における原発比率は一番高い状態でした。各地の原発の再稼働も進みませんでした。一方で原子力は、ベースロード電源として重要です。関電は4機を再稼働させていただいており、日本の原子力を支えたいという思いはありました」
--森山氏からの金品の授受の状況ですが、森山氏側が、関電との会食の場に吉田開発などの工事業者を同席させ、その場で金品が渡されたケースもあったと報告書にあります
岩根社長「森山氏から地元への工事発注をよろしく、という話はあったと聞いています。ただ吉田開発は、ある程度の規模の工事を実施することができる、地元で唯一の企業だったというケースもありました。契約や発注の適正性は、われわれが担保してきました」
https://www.sankei.com/west/news/191002/wst1910020032-n1.html
2019-10-02 05:23:00Z
52781948413842
Tidak ada komentar:
Posting Komentar