Selasa, 04 Agustus 2020

アイリスオーヤマのマスク、何がすごいのか? - WEDGE Infinity

 今年、アイリスオーヤマの国産マスクが上梓されました。「ナノエアーマスク」です。夏を考慮した新しい不織布マスクです。日本は、必要マスクの生産のほとんどを中国をはじめとする海外に頼っていましたが、シャープ、アイリスオーヤマ、ユニチャームなどが、国内生産、増産を開始し始めました。今回はアイリスオーヤマに焦点を当ててレポートします。

アイリスオーヤマのマスクビジネス

「ナノエアーマスク」

 アイリスオーヤマが扱うモノは多岐に渡ります。最近は家電が有名ですが、業績が伸びたのはプラスチックの収納ボックスです。このため、ホームセンタールートに強く、グループ傘下に「ダイシン」などのホームセンターを持ちます。基本、アイリスオーヤマが扱うものは、ホームセンターで販売するものが中心と考えるとわかりやすいです。

 2007年にマスク市場に参入したアイリスオーヤマは、中国に設けた自社工場で生産してきました。場所は、大連と蘇州の2カ所。中国生産は当然というと、当然。今のマスクの基本は、不織布マスクで使い捨て。衛生用品を使い捨てにするのは現代医療がそのような考え方だからです。高価な機器、器具は洗浄、滅菌して使うのですが、そうでないものは廃却、焼却。感染を断つための措置です。このため安く作らなければなりません。

 しかし今、日本では、布マスクが流行っています。本来、感染病が流行している場合、不織布マスクの方がベターなのですが、今年の2月、中国で生産するマスクが輸入できなくなり、マスクの供給は需要に全く追いつけない事態になります。その時、政府肝入りで配布したのが布マスク。メリットは「洗えば、また使える」ということ。ですが、このマスク小さく、不良品さえ混入していた上に、配布が遅い。三重苦のマスクでしたので。このため「僕にもできる!」という感じで、自作されるようになります。

 布マスク=手作り可能ということで、どっと衣類メーカーが参入。折しも、外出自粛ですから、衣料品のニーズは減。渡りに船とだったからです。しかし、それでも海外の有名ブランド、コロナ禍で倒産の憂き目にあったブルックス・ブラザース他、名だたる有名ブランドが作ったのにはびっくりしました。

 これらの多くは、手縫いに近いものです。逆な言い方ですが、少量なので布マスクは急激に立ち上げることができたのです。中国での生産もそうですね。この2月に倍増し、36億枚/月になったのは、ほとんどが布マスクだからです。要するに人海戦術です。しかし、逆に多くの人が関与するので品質が安定しない。事実、品質未達ということで、中国政府が援助したマスクが多くの国から送り返されました。

 同じ時に、日本政府は、補助金を出し、日本メーカーにマスク生産を募ります。が、緊急を要するとして「短期立ち上げ(約1カ月)」を条件とします。不織布マスクは、大量生産可能ですが、原材料の確実な確保が必要ですし、品質保証のためクリーンルームでの生産が必要です。言い換えると、工場の建屋が自在に使えるとして、改装にようるクリーンルームの設置、クリーンルームの中に生産設備の設置、材料の確保と立ち上げですから、通常は早くても3カ月かかります。

 1カ月という短期で不織布マスクを立ち上げることができたのはシャープだけです。これはシャープが液晶パネルを国内で生産しており、その生産数量が減ったために、有休状態のクリーンルームがあったからです。またシャープの親会社、台湾のホンハイも自社の従業員で使うために昨年末よりマスク生産をはじめています。だからこそ、国内生産を2月に決めたシャープは3月に生産、出荷することができたわけです。

 では、アイリスオーヤマの場合はどうでしょうか?

 アイリスオーヤマは今回、マスクの国内生産に対し、約30億円もの投資を行いました。月産:1億5000万枚(2020年8月に達成見込み)を実現するためです。内容は、(1)関連建屋へのクリーンルームの導入、(2)マスクの自動生産ラインの設置と立ち上げ(40ライン分)、(3)必要材料(不織布他)の国内生産です。投資の理由は、政府に請われたこと、国民の役に立つためですが、その中には、しっかりとしたビジネス見通しがあるように思います。

アイリスオーヤマの国産マスクライン

 仙台から東北本線で南に行くと角田市があります。そこにアイリスオーヤマの中核の一つ、角田工場があります。「JR船岡駅が近いですよ」ということで、電車に揺られて行ってきました。角田市は、市になってはいますが、ちょっと行くと山などがあります。川は有名な阿武隈川。自然豊かなエリアで、高い建物は学校、マンションレベル。タクシー移動で、途中道の中央を示す白線がなくなる位の道を通ると、丘一つ丸ごとという感じの角田工場が姿を表します。

 敷地内には建屋とともに、幾つもの駐車場。クルマがないと自由に行き来できない雰囲気です。それは人から見た時です。工場の場合、輸送という見方をしなければなりません。特に、プラスチックの収納ケースなどは、空気を運んでいるようなところがあり、輸送によるコストロスが大きい。このために山間でも高速のインターチェンジの近くなどに作るわけです。

 さて、マスクの新設ラインですが、複数ある建屋の1つ、2階にありました。部屋はかなり大きく、ざっと30×20×4mくらい。クリーンルームです。中に入っているのは、8ライン。最終的な40ラインへの始めの一歩というわけです。

 マスクの生産ラインはかなりコンパクトです。マスク幅にカットされた、2種3個の不織布と、ノーズフィット用のワイヤーが送り出し部にあります。次の工程で、それらを重ねて、超音波溶着。超音波溶着は汎用性が高い技術で、ホチキッスのようにタマなどがなくても、それぞれの部材を止めることができます。身に付けるモノですから、安全性は高くなければなりません。

 そのあと、プリーツ折込みし、また溶着。最後に耳ひもを溶着し終了。マスクの性能品質はフィルターの役割ですので、工程品質としては、正確にカットされていること、溶着が長期使用でも外れないことです。ちなみに、不織布マスクも洗って再利用できるとする記事も見受けられますが、それを保証するには溶着強度を「洗いも可」レベルに上げる必要があります。メーカー側は、そのような品質保証はしていないので、このような話は、「くれぐれも自己責任で」、です。

 中のオペレーターの人数も少なく、最終的にはAIでの自動生産を目指すとのこと。今回、100人の新規雇用もありますが、今までのような、単純ラインオペレーターではなく、令和ならではの、仕事になりそうです。

 当日は、8ラインのうち、4ラインが新製品「ナノエアーマスク」を生産していました。このナノエアーマスクこそ、アイリスオーヤマの今後のマスクビジネスに大きな意味を持つマスクです。

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2020-08-04 21:47:26Z
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