注目のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の記者会見。
いきなり核心を突く質問が出た。16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明文では、量的緩和の期間についての表現を、これまでの「今後数カ月」から「完全雇用と物価安定に近づくまで継続」に変えたので、「具体的な数値目標はいかに」と突っ込まれたのだ。
答えは「これでも力強い表現だ」と抽象的で、自画自賛気味の答弁。その後も、パウエル氏は、珍しく大きなジェスチャーが目立った。講演最中に適当な表現をひねり出すときは、その心理的圧力から、自然に手を上げたり振り回したりするものだ。言質を取られないための配慮がにじんだ。
市場の関心は2021年の米経済成長見通しが4.0%から4.2%に引き上げられたこと。21年1-3月期は、コロナ情勢最悪が必至で、民間ではマイナス成長の数字も飛び交う。通年で4%以上ということは、春以降に、急速な経済回復を見込むことになる。抑制されてきた設備投資や個人消費が一気に噴出するシナリオであれば、追加緩和は不要ではないか、との素朴な疑問も芽生える。
そこで「量的緩和のテーパリング(縮小)」についての質問も出たが、「いずれは、そのような議論も出よう」程度ではぐらかされた。
とはいえ、既に、FRBの資産規模はコロナ危機に7兆ドル規模に急速膨張が目立つ(添付グラフ参照)。振り返れば、コロナ危機前は、FRBの適正資産規模の議論で3-4兆ドルの数字が出ていた。先取りして動く市場では、そろそろ「資産圧縮」開始時期についての観測も出始めている。「2023年までゼロ金利継続」について、今回は一人だが反対意見が出たこともドットチャート(FOMC参加者の金利予測分布)で判明した。利上げに至っては、パウエル議長がこれまでは「考えることさえ考えたことがない」とまで言い切ってきた。今後これが「考えることは考えた」程度に変化すれば、潮目変化の兆しとされよう。

総じて、超金融緩和政策の出口らしき光が、長いトンネルのはるか先に点灯したかという程度の変化が今回のFOMCを通して感じられる。それでも真っ暗闇のトンネルとは印象が異なる。
ここは日銀にとっても「要経過観察」事項となろう。
実質的なFRB主導のドル安による「とばっちり円高」への対応に有力な政策手段が見当たらない以上、外国頼みの円安を待つしかない。参考までに、日銀の資産膨張を示すグラフも添付した。

なお、FOMCのたびに、世界的な傾向として、マイナス金利時代の金融政策の限界が議論される。筆者の友人ジム・ロジャーズ氏などは、極論だが一貫して「FRB不要論者」だ。そもそも7兆ドルにも膨れたFRBの資産規模を4兆ドルに戻すテーパリングなど実際問題として不可能と切り捨てる。このような中央銀行に対する懐疑論調が拡散して、ビットコイン高騰の一要因となっている。
そのビットコイン相場が、FOMC当日に初の2万ドル突破という展開になったことも示唆的だ。今回のビットコイン高騰のキッカケは、ジョージ・ソロス氏の右腕として名を馳せたスタンリー・ドラッケンミラー氏や、ポール・チューダー・ジョーンズ氏など米国カリスマ投資家が相次いでビットコインを投資手段として認知して購入を示唆したことだった。共通した認識は「未曽有の量的緩和の後始末に関する不安」である。
このカリスマ投資家のお墨付きに乗り始めたのが、運用難に悩む機関投資家だ。JPモルガンは早速リポートで、先進主要国の年金・保険関係投資総額を60兆ドルと推定した。その1%が暗号資産市場に流入すれば6000億ドルに達する。暗号資産市場の時価総額3300億ドルの倍近くに匹敵する額との試算である。
実例も出始めた。米保険大手マスミューチュアルが、1億ドル相当のビットコイン購入を明らかにしたのだ。同社は、米保険業界のオピニオンリーダー的存在とされ、横並びで買いの連鎖が想起されている。もちろん、機関投資家がFRB不要論者というわけではない。コロナ後の超金融緩和・財政拡張政策の出口問題を保険会社など長期投資家がリスクシナリオとして認知し始めたということだ。
市場にとって心強いのは「J-J」連携。ジャネット・イエレン氏とジェイ・パウエル氏のイニシャルをとった最近ウォール街で流行(はや)りの新語だ。イエレン次期財務長官は、FRB議長退官後、バーナンキ元FRB議長との壇上対談で「私は、あなたの始めたこと(量的緩和)の、後始末役となったのよ」とジョークを交え語ったことがある。そして、今回は、米国債増発の後始末とバイデン増税の実行役という「貧乏くじ」をあえて引いた。
2021年、マーケットのキーワードはJ-Jとなりそうだ。

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2020-12-17 03:23:28Z
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