Kamis, 03 Desember 2020

大容量プラン、値下げ主戦場 KDDIなど追随へ圧力 - 日本経済新聞

NTTドコモの新料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表する井伊基之社長(3日、東京都渋谷区)

NTTドコモが主力ブランドの料金引き下げを表明したことで、サブブランドの値下げを発表していたKDDIソフトバンクに対する追加値下げの圧力が強まる。次の値下げの本命は割高なデータ大容量プランだ。新たな値下げ競争が火蓋を切る。

「3番手の現状を変える。他社に勝つための値下げだ」。3日の記者会見でドコモの井伊基之社長はこう強調した。

データ利用量20ギガ(ギガは10億)バイトで2980円の新プランは業界で最安値水準となる。格安スマホもこのデータ容量では3千~4千円台のプランが多い。海外6都市の20ギガバイトプランの料金比較で、最安値のロンドン(2700円)と遜色ない。

ドコモは既存の大容量プランなどを値下げする方針も明らかにした。12月中に詳細を発表する。すべてのデータ容量帯で値下げをする見込みだ。ドコモ契約者のすべてが、値下げプランへの乗り換えを検討できるようになる可能性が高い。

ドコモが大容量プランを値下げする方針を打ち出したことで、KDDI、ソフトバンクは今後、主力ブランドでの値下げ対応を迫られる。

2社はそれぞれサブブランド「UQモバイル」「ワイモバイル」で20ギガバイトで4000円前後の新プランを発表していた。しかし、サブブランドで大容量を使う消費者は限られる。総務省によると、国内のサブブランドの契約者で10ギガバイト以上の利用者は4%に満たない。

KDDIやソフトバンクはサブブランドのテコ入れで政府の値下げ要請に応えたつもりだったが、武田良太総務相は11月中旬以降、主力ブランドの値下げを強く求めるようになった。KDDI、ソフトバンクとも主力ブランドの「au」「ソフトバンク」の値下げには手つかずのままだ。

菅義偉首相は、官房長官だった18年8月から携帯各社に値下げを求めてきた。しかし、消費者は値下げの実感に乏しい。

携帯各社は18~19年に値下げしたが、動きが一巡した19年9月時点の料金を調べると、auやソフトバンクでは、端末代を含めた携帯料金の負担が従来より増したプランも多かった。ドコモは19年6月に値下げしたが、競合2ブランドの水準にとどまった。

問題は料金だけではない。総務省が無料にする方針を打ち出した乗り換え手数料を含め、これまで携帯大手は様々な手数料を徴収してきた。こうした施策が消費者の不満の種になってきた。

携帯3社は昨年まで割高な通信契約とセットにし、端末代を大幅に値引く手法で「iPhone」などの高価格帯の端末を売ってきた。携帯はキャッシュカウ(金のなる木)となり「各社が潤って競争が鈍くなる構造となった」(MM総研)。これが携帯料金の高止まりにつながった。

ドコモが主力ブランドの値下げ方針を決め、ひとまずサブブランドの値下げで乗り切ろうとしていたKDDIやソフトバンクは対応を迫られる。「(サブブランドの新プランは)魅力的に仕上がった。今期業績に影響はない」(KDDIの高橋誠社長)といった楽観ムードは一変した。

わかりにくい携帯料金の見直しが進むかどうかも焦点だ。ドコモの井伊社長は「既存のサービスはよりシンプルな料金プランに見直す」と話す。

一方、急な値下げで携帯各社は次世代通信規格「5G」の投資余力をそがれる可能性もある。ある大手幹部は「今はまさに5Gインフラを構築する時期。値下げ要請のタイミングが悪すぎる」と嘆く。消費者還元と成長投資のバランスをどう取るのか。難しいかじ取りを迫られている。

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