福島県を地盤とする福島銀行は11日、SBIホールディングスから出資を受けると発表した。島根銀行に続き、異業種のSBIとの提携で生き残りを探る。地銀は低金利と人口減で経営が厳しく、有力地銀すら出資を伴うリスクのある再編には動きにくい。事業拡大を目指すSBIを受け皿に地銀ネットワークができつつあるが、再生の道筋を描けるかは未知数だ。
「銀行同士の提携には規模のメリットがあるが、ビジネスモデルを変えるには限界がある」。11日に福島市内で開いた記者会見で、福島銀の加藤容啓社長はSBIと資本提携する意義をこう強調した。福島銀は第三者割当増資でSBIから約11億円の出資を受ける。出資後はSBIが福島銀株の17.85%を保有し、筆頭株主となる。
福島銀がSBIを資本提携先に選んだ最大の理由は「異業種」である点だ。投資信託などSBIの商品を販売して手数料収入を拡大する。SBIグループのノウハウを生かし、簡単に預金口座を開設できるサービスなどで利便性を高める。2020年1月にも県内にSBIとの共同店舗を開設する。
出資による資本増強を受けて、中小企業の将来性を評価してリスクをとる融資の拡大を目指す。加藤社長は「約10億円の増資で100億円以上の資金需要に応えられる。前向きな投資だ」と述べた。運用でも債券や投資信託など有価証券の運用業務をSBIに委託することを検討する。
SBIにとってのメリットは事業規模の拡大だ。地銀の顧客である企業や富裕層に対し、SBIグループの事業承継やM&A(合併・買収)、住宅ローンなどの商品・サービスを提供できる。記者会見したSBIの森田俊平専務は「地元から信頼のある地銀と組むことで、顧客基盤が広がる」と期待を示した。
将来は基幹系を含めた地銀のシステム運用まで手掛ける構想もある。先に提携した島根銀を含めて協業先が広がれば、経費削減の効果はより大きくなるとみる。
ビジネスモデルの転換に遅れる地銀と、銀行を通じて顧客への接点を持ちたいSBI。両者にとってメリットのある提携だ。だが福島銀の現状を考えると、思惑通りに効果が出るかどうかはまだ見通せない。
福島銀が11日発表した2019年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比72%増の2億7300万円だった。20年3月期の純利益は前期比42%減の3億円の予想。銀行の利益としては極めて小さい。貸出金残高は5千億円超と地銀では下位で、福島県で最大手の東邦銀行の7分の1程度に過ぎない。
一定の収益力がなければ、SBIとの協業を広げることもできない。収益改善には店舗の統廃合などのリストラが欠かせないが、11日の記者会見では合理化の具体策を出すことはなかった。
福島銀の加藤社長は東邦銀行の出身だ。県内の大手が不振の下位行を救済するとの見方はあったが、実際には距離を置いた。有力地銀すら積極的な関与に踏み切れない地銀を、SBIが再生できるかどうかはまだ見通せない。
上場する78の地方銀行・グループの2019年3月期の連結純利益は計8604億円で前の期より11%減り、3期連続で最終減益だった。単独では生き残りが難しいとされる地銀は少なくない。SBIによる地銀ネットワークの成否は、今後の地銀再編にも影響する。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52033380R11C19A1EA2000/
2019-11-11 11:00:00Z
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