楽天ペイメントとJR東日本(東日本旅客鉄道)が6月5日、キャッシュレス化の推進に向けた連携を発表。2020年春(予定)に、「楽天ペイ」アプリ内で「Suica」の発行やチャージが可能になる。チャージした電子マネーは全国の交通機関(鉄道約5000駅やバス約5万台)と、約60万の加盟店で利用できる。
楽天ペイアプリから発行されるSuicaカードは、楽天のコーポレートカラーでもある赤を基調としたものになる。機能面での特徴として、楽天ペイアプリからSuicaにチャージをすると、楽天スーパーポイントがためられる。
機能は「Suica発行」と「チャージ」に限られる。楽天ペイアプリから定期券・グリーン券の購入はできず、その際は「モバイルSuica」アプリが必要。またオートチャージにも対応していない。チャージ可能なクレジットカードは、まずは「楽天カード」が対応する。
対象端末は、「おサイフケータイ」に対応したAndroid端末。iOSについては「今後検討する」(両社)とのこと。
JR東日本は「モバイル」の利用を促進させたい
JR東日本は、スマートフォン向けのSuicaサービスとして、Android向けには「モバイルSuica」を提供し、iPhone向けには「Apple Pay」と連携するサービスを提供している。2018年8月にはみずほ銀行と連携し、「みずほWallet」アプリからSuicaカードを発行できる「Mizuho Suica」の提供を開始した。JR東日本がSuicaサービスで提携するのは、楽天がみずほに続く2社目となる。
JR東日本は、なぜ楽天を第2のパートナーに選んだのか。常務執行役員 IT・Suica事業本部長の野口忍氏は「Suicaはリアルなシーンでの利用を広げてきたが、楽天はネットの世界で圧倒的なプラットフォームをお持ちなので、Suicaの弱い部分を補うベストパートナーと考えた」と説明する。楽天との協業により「日本のキャッシュレス基盤をさらに強化していけるのでは」と期待を寄せる。
キャッシュレスの世界でSuicaはメジャーなサービスの1つだが、まだユーザーの裾野を広げる余地があると同社は考える。今回の楽天に加え、「たまにしかSuicaを使わないお客さまに(もっと)使ってもらえる可能性のあるところには、今後も積極的に提携していきたい」と、野口氏は協業に積極的な姿勢を示した。
Suicaカードのユーザーには、モバイル決済に移ってほしいという狙いもある。これは「チャージが便利になって利用が進む」(野口氏)ことに加え、定期券や切符などの売り場の混雑解消につながるためだ。
連携時期が2020年春とやや先なのは、「Suicaのシステムを(楽天の)サービスに組み入れるのに時間がかかるため」(野口氏)で、「両社でこのサービスをどうやって運用し、お客さまにどうアピールするかの検討も必要」とのこと。オートチャージ非対応としたのは「スマホから便利にチャージでき、カードに比べてニーズが大きくない」と判断したため。
楽天はキャッシュレス推進の一環で提携
楽天にとっては、楽天ペイで他社と協業するのは今回が初となる。同社はクレジットカード、アプリ決済、オンライン決済、電子マネー、ポイントプログラムなど多方面でフィンテック事業を展開している。国内のキャッシュレス比率はまだ伸びる余地があるため、他の決済事業者と戦うというよりは、積極的に協業をする「オープン戦略」を取っている。
「(フィンテック事業を)多様に拡充していく中で、その目玉ともいえるのが、今回の協業」と楽天ペイメントの中村晃一社長は話す。それは「社会インフラともいえる強力なサービスがラインアップに加わる」からで、「移動手段に(関わる)機会をいただけるのは、従来型の決済の発想から枠を広げて、ユーザーの毎日の生活にものすごく大きな影響がある」と期待を寄せる。
楽天は「Edy」も提供しており、非接触決済サービスという点でSuicaとは競合関係になる。しかし楽天は先述の通り、オープンな戦略でキャッシュレス化を推進しており、Suicaはその大きなパーツの1つになる。「系列やグループにこだわらず、いろいろなところに浸透していくのが決済サービスの本質。ユーザーにとっては、1つのプロトコルにおける勝敗というよりは、いかに便利に使えるかが重要」と中村氏は話す。
Suicaへのチャージで楽天スーパーポイントが付与されることが、大きなモチベーションになり、「(JR東日本が)リーチできなかった層にも、私たちのユーザーの広さを考えると貢献できるのでは」と、中村氏はユーザーの拡大に自信を見せた。
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https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1906/05/news118.html
2019-06-05 10:47:00Z
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