ソフトバンクは6月24日、第33回定時株主総会を開催した。2018年12月の東証一部上場後初の株主総会となり、多くの株主が集まった。
2018年度の売上高は前年度比5%増の3兆7463億円、営業利益は13%増の7195億円で過去最高益を記録した。2019年度の連結業績予想は、売上高が4兆8000億円、営業利益は8900億円、純利益は4800億円とした。
通信事業のさらなる成長と非通信の新領域の拡大によって、通信キャリアを超えたプラットフォーマーを目指す「Beyond Carrier」という目標を掲げる同社。事業報告の中では、大規模なキャンペーンや急速な加盟店開拓によって高い知名度を得た決済サービスの「PayPay」のほか、タクシー配車サービスの「DiDi」、MaaS(Mobility as a Service)の実現に向けたトヨタ自動車との合弁会社「MONET」など、新たな取り組みの数々が紹介された。
モバイルの契約数はボーダフォン買収からの13年間で3倍、営業利益は10倍に成長。宮内謙社長は、スマートフォンの需要は飽和しつつあるという声もあるが「スマホには無限の可能性がある」と語った。
Eコマースや決済サービスなどを例に挙げ、スマートフォンを起点に人々の暮らしを変えるサービスの普及はまだ始まったばかりだと説明した上で、これらによって社会に変革を起こす「1億総スマホ時代」に向けて、まだスマートフォンを所持していない人は個人に限っても35%いると伸びしろの大きさをアピールした。
一方の非通信事業、新領域の事業については、今後5~10年のキーとなるテクノロジーは「5G」「ビッグデータ」「AI」の3つだと定義。通信キャリアとして5Gビジネスをリードしていくだけでなく、ヤフーの連結子会社化によって大規模なデータ基盤と約3000人のIT技術者を確保し、競争力を高める。また、世界各国のAI企業への投資も積極的に行い、AIを軸にした事業で大企業や自治体との連携も進める。
米中摩擦によるファーウェイへの対応は?
質疑応答では、株主から米中の貿易摩擦に端を発する一連の騒動を受けて、ファーウェイ製品の扱いはどうするのかという質問が挙がった。
ネットワーク設備については既報の通り、5Gではエリクソンやノキアなど欧州のベンダーを採用する。4Gでは「Massive MIMO」関連の機器などにファーウェイ製品を採用しており、性能面では非常に優秀な機材だと言及。政治的な問題が絡んでいるので現時点で結論を出すことは難しいとしつつ、継続して運用していく方針を示した。
一方、ユーザーが手にするスマートフォンなどの端末については、OSや各種サービスの根幹を握るGoogleの判断にかかっている部分が大きく、夏モデルの発売は保留している状態だと改めて説明した。
5G基地局、電柱や信号機は使わない?
プレゼンテーションの中で、5Gネットワークの構築には既存の約23万カ所の基地局網を活用するという話があり、ソフトバンクも実証実験に加わる予定の東京電力パワーグリッドの電柱を活用した基地局の設置や、政府が提案している信号機への基地局設置は開設計画に織り込まれていないのかという質問があった。
これについては、電柱や信号機への基地局設置は実験や協議などでまだこれから時間がかかる話なので、基本的には既存の基地局で確保した自前のロケーションを活用しながら、それを補う形で活用していくとした。
「PayPayは使っていない」セキュリティや利便性に関する株主の声
コード決済サービス「PayPay」については2名の株主から質問があり、1人は「セキュリティ面が心配だから使っていない」、もう1人は「電車に乗る機会が多く、交通系ICを使ってしまうから使っていない」という内容だった。
セキュリティについては、サービス開始時点ではできるだけ簡単に使えるサービスを目指した結果いくつかの課題が出てきたこと、3Dセキュア導入などの一連の再発防止策をとった後はセキュリティに関するクレームはほとんどなく、今後も引き続き強化していくことを説明。
シェア拡大のための取り組みについては、まずはユーザーの多いコンビニやドラッグストアをターゲットに、大手チェーン店との提携で利用可能な加盟店を全国で増やしていく。
上場以降、売り出し価格を上回らない状況に不満の声も
前年度の業績は過去最高益を記録した一方、株主の大きな関心事である株価がふるわない点については厳しい声もあった。同社株の売り出し価格は1株1500円であったが初値は1463円で、2018年12月19日の上場以降、売り出し価格を上回らない状況が続いている。
上場を控えた12月6日、ソフトバンクでは約3000万回線に影響する大きな通信障害があった。上場時の会見でも言及され、通信障害の影響として約1万~2万回線の解約があったことが明かされた。
ある女性株主は、上場会見での対応について「(解約数を発表すると)知っていたら買わなかった。記者会見は株価を左右する大事な場であって、不用意な発言をしないで欲しい」と株価、ひいては株主に大きな影響を与える行動に怒りをあらわにした。
なお、ソフトバンク側は、当時は10万、20万といったさらに大幅な解約を予想する見方をされていたことから、実情を明らかにする判断に至ったと説明。契約数はその後回復し、業績も好調であり、今後の行動をもって株主の期待に応えていく姿勢を見せた。
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1192274.html
2019-06-24 09:58:13Z
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