Jumat, 30 Oktober 2020

新型コロナ:ユーロ圏7~9月GDP、年率61%増 コロナ前届かず - 日本経済新聞

【ベルリン=石川潤、ニューヨーク=後藤達也】新型コロナウイルスの感染が再び広がる欧州と米国で景気の先行き不透明感が強まってきた。7~9月の国内総生産(GDP)は4~6月の底からそろって急回復したが、危機前の水準への正常化はまだ遠い。各国は感染を抑え込もうと都市封鎖(ロックダウン)に動いており、景気後退のリスクも高まりつつある。

欧州連合(EU)統計局が30日発表した7~9月期のユーロ圏の実質GDPの速報値は前期比12.7%、年率換算では61.1%の大幅増となった。経済がほぼ静止状態となった4月から工場の操業再開などが進み、見かけ上はV字型の回復を遂げた。

ただ、前年同期比では4.3%減でコロナ禍前の水準には及ばない。経済をけん引する輸出は中国向けが堅調だが、米国や日本、インド向けなどは低迷が続く。新型コロナを巡る先行きの不透明感も投資や消費の重荷になっている。

こうした状況は米国にも重なる。29日公表の米国の7~9月期のGDPは前期比年率で33.1%増えたが、前年同期よりは2.9%低い水準にとどまった。トランプ政権はGDPの15%にあたる3兆ドル(約315兆円)の財政出動に踏み切ったが、飲食・サービスなどを中心に個人消費はなお本来の力強さを欠く。

さらに、正常化が道半ばの状況でコロナ感染の再急増が経済に追い打ちを掛けつつある。1日の新規感染者数は欧州で20万人規模、米国で8万人規模となり、これまでで最悪の水準だ。フランスが全土で外出制限したほか、ドイツも「集中治療室が満杯になってからでは遅すぎる」(メルケル首相)と飲食店などの営業禁止に踏み切った。

街角からは人影が消えつつある。地図アプリのデータを分析した米アップルによると、公共交通機関の利用は27日までの1週間で、1カ月前と比べてイタリア、ベルギーで3割強、独仏で16~18%減った。外出制限はユーロ圏の雇用の75%を支えるサービス業を苦境に追い込みかねない。

「景気回復の勢いは失われつつある」(欧州中央銀行のラガルド総裁)。欧州最大の経済大国であるドイツでは、10月のIfo景況感指数が6カ月ぶりに悪化した。同指数を基にした景気循環分析によると、ドイツ経済の「好況」はわずか1カ月で終わり、10月から「景気後退」に突入した。

ロックダウンの連鎖は米国にも広がっている。米ニューヨーク・タイムズ紙によると全50州のうち、ニューヨークやカリフォルニアなど7つの州がいったん緩めた規制の強化に転じた。シカゴでは23日からスーパーなどを除き、店舗の夜間営業に制限を設けた。ニューヨーク州は10月に入り、感染の多い地域での店舗営業や学校の対面授業に規制を課した。

国際通貨基金(IMF)によると、コロナの収束が遅れれば、2021年の世界の経済成長率は5.2%から2.3%へ落ち込む。2年間で3.9兆ドル(410兆円)の経済損失が生じる計算だ。欧州は10~12月に再びマイナス成長に落ち込むシナリオが現実味を帯び、米国でも成長率の下振れ懸念が強まっている。

弱る経済を支え、再浮上に導くカギとなる財政も限界がある。イタリアの政府債務のGDP比が3月末の137%から6月末に149%に上昇した。ドイツは行動制限の影響を受ける企業に最大100億ユーロ(約1.2兆円)を支援するが、制限が長引けば財政支出が際限なく膨らみかねない。

EUは7500億ユーロ(約92兆円)の復興基金の創設で合意したが、欧州議会や各国議会の同意を得るための協議が難航している。21年初めからの稼働をめざしているが、予定通りに始動できるか危うい状況だ。米国では中小企業の雇用維持策は申請期限が切れるなど、公的支援が失われる「財政の崖」への懸念がじわじわと高まっている。

厳しい規制を導入すれば経済は落ち込むが、規制をためらえば感染拡大で経済はさらに大きな打撃を受ける。経済と感染抑止は両立できるのか。ワクチンや治療薬がいまだ見つからないなか、欧米当局は最適解を探しあぐねている。

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