中小型液晶大手ジャパンディスプレイ(JDI)が、中国の投資ファンドや台湾企業による中台連合の傘下に入ることが決まった。官民一体で立ち上げた「日の丸ディスプレー」は、7年で旗印を降ろす。当面の資金は調達したものの、JDI再建は見通せない。
◇崩れた技術優位
「国内に資金の出し手もなく、他に選択肢がなかった」。現在、筆頭株主である政府系ファンドINCJ(旧産業革新機構)をはじめ、スポンサー探しに奔走した関係者は口をそろえた。
JDIは2012年にソニー、日立製作所、東芝の中小型液晶事業を統合して発足した。2年後の14年に東証1部上場を果たした際、大塚周一社長(当時)は自社製品の強みについて「非常に技術的に難しく(他社の)参入障壁が高い」と強調。「中小型液晶市場でグローバルの覇者になりたい」と豪語した。
だが、中国では政府の手厚い支援を受けて巨大な液晶工場が次々に誕生。高精細液晶も手掛けるようになった。技術的優位性が揺らいだJDIは価格競争に巻き込まれ、赤字体質に陥った。
「数兆円の投資を簡単に決められる国に勝てるわけがない」。あるJDI幹部はあきらめ顔で話す。だが、国際的な競争環境を見誤り、工場合理化や事業転換の判断が遅れた影響は否定できず、識者からは「技術ではなく経営の問題」との指摘も出る。
12日のJDIの株価は79円と、公開価格(900円)の10分の1以下。批判の矛先はJDI株を保有するINCJにも向けられている。企業再生を手掛ける民間の投資ファンドの目には、「(INCJの)売却の判断が遅かった。今の企業価値では足元を見られ二束三文だ」と映る。中台連合が引き受ける新株の発行価格は1株当たり50円と、公開価格を大きく下回っている。
◇「アップル依存」変わらず
今回の資金調達で、JDIは米アップルが今年後半に発売予定の「iPhone(アイフォーン)」最新機種など向けの製品供給にめどを付けた。茂原工場(千葉県茂原市)で生産する有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネルも「アップルウオッチ」への採用が決まりそう。資金繰りをめぐる不安はひとまず遠のきそうだ。
JDIの月崎義幸社長は12日の記者会見で、中台連合の傘下入りについて「われわれはグローバル企業という認識だ。枠にとらわれず資金調達をしていく」と述べた。
新たなスポンサーは見つかったものの、アップルに売上高の大半を依存する不安定な経営環境は続く。1年前にもJDIは外部から550億円を調達し、アイフォーン向けに最新鋭の高精細液晶を供給したばかり。だがアイフォーンの販売不振で、JDIは19年3月期に目指していた5年ぶりの黒字化を断念した。
収益確保策も手探りが続く。JDIの技術供与で中国に有機EL工場を新設する計画が検討されるが、実現性は不透明。まずは市場が縮むスマートフォン向けの設備を見直し、車載向けに軸足を移す構造改革が急務だ。コスト削減のために中国や台湾への生産移管も浮上しそうだが、国内工場が立地する地元との調整は容易ではない。
「『日の丸』かどうかではなく、今後の経営戦略をどう描くかが問題だ。こうした状況は今なったのではなく、ずいぶん前から分かっていたことだ」(主力取引銀行幹部)。落日の「日の丸ディスプレー」の命運は中台勢に委ねられた。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190413-00000022-jij-bus_all
2019-04-13 07:44:00Z
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