【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は10日、米下院委員会で議会証言に臨み「より緩和的な金融政策の必要性が高まっている」と主張し、月内にも利下げに転じる意向を表明する。貿易摩擦で企業投資が減速しており、物価の停滞にも懸念を示す。金融市場も7月末の会合での利下げを確実視しており、FRBは経済データを見極めて最終決断する。
パウエル氏は10日の下院金融サービス委員会で、半期ごとの議会証言に臨む。事前入手した冒頭証言文によると「貿易摩擦や世界景気の減速で、米景気の不透明感が高まっている」と指摘。利下げについても「米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加者の多くが、その必要性が高まっていると判断している」と表明し、金融緩和への転換を強く示唆する見込みだ。
FRBは次回のFOMCを30~31日に開く。パウエル氏は6月の会合でも利下げの可能性を示唆したが、10日の冒頭証言では「6月以降も貿易摩擦や世界景気への懸念によって、米経済の先行きが圧迫され続けている」と改めて主張。7月末の次回会合で利下げを決断する条件が整いつつあると示唆する。
金利先物市場ではすでに「FRBが7月末の会合で利下げする」と100%の確率で織り込んでいる。パウエル氏の下院委での冒頭証言は、市場の緩和観測を追認するものだ。国内景気についても「家計支出は回復しているが、企業投資は貿易摩擦などで顕著に減速している」と強い懸念を表明する見込みだ。
FRBは2015年末に利上げを再開し、政策金利を2.25~2.50%まで引き上げてきた。7月末の会合で政策金利の引き下げを決断すれば、金融危機直後だった08年12月以来の利下げとなる。ドル相場などを通じて世界の金融市場を再び揺るがし、日銀や欧州中央銀行(ECB)などとともに、主要中央銀行は再び緩和競争に突入する可能性もある。
米景気は拡大局面が11年目に突入し、戦後最長を更新したばかりだ。パウエル氏も10日の議会証言で「失業率は50年ぶり近い水準まで下がり、労働市場は健全だ」と主張する。それでも早期の利下げに転じつつあるのは「物価上昇圧力が弱まっている」(パウエル氏)ことが大きい。直近の物価上昇率は1.5%と目標の2%から遠ざかり、FRB内には「予防的利下げ」(クラリダ副議長)を求める声がある。
パウエル氏には「経済データだけでなくFRB議長としての政治判断」(中銀首脳OB)もありそうだうだ。20年の再選を最優先するトランプ米大統領は景気減速を避けるため「利下げを実行する必要がある」と露骨に圧力をかける。FRB理事に自らの側近を送り込む人事案も表明しており、FRBは組織防衛の面からも利下げの先送りが難しくなりつつある。
もっとも、FOMCの参加者全員が7月末の利下げで結束しているわけではない。6月の会合でメンバー17人が示した19年中の政策金利見通しは、8人が年内の利下げを主張する一方、8人は政策金利の現状維持を予測し、1人は利上げを予想した。パウエル氏ら執行部は早期の利下げの意向を固めているとみられるが、FOMC全体で利下げを断行するには、議長の指導力が求められる。
パウエル氏は10日、下院委で冒頭証言に続いて議員との質疑応答に臨み、11日には上院委でも同様に議会証言に応対する。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47210010Q9A710C1EA1000/
2019-07-10 12:30:00Z
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