この冬、深刻な電力不足が心配されている。経済産業省によると、供給の余力を示す予備率が東京電力管内でマイナスの見通しだ。中部や関西、九州など6電力管内の予備率も3%で、安定供給に最低限必要な水準しかない。経産省は近く対策を示し、大手電力会社に供給力を増やすよう求める。
背景には2016年の電力小売り自由化で経営に余裕のなくなった大手電力が、運転にコストがかさむ古い火力発電所を休廃止していることがある。大手電力が期待するほど原発が再稼働していないことも要因だ。供給不足になれば、暮らしや企業の活動に影響を与えるだけに、大手電力は対応が求められる。
全国の需給調整役を担う「電力広域的運営推進機関」の4月末時点のまとめによると、来年2月の需要ピーク時の予備率は、東電管内でマイナス0・3%。マイナスの見通しは、東日本大震災後に電力不足に陥った12年夏の北海道、関西、九州の各電力管内以来だ。
予備率は需要が大きくふくらんだ場合に、どのくらい供給の余力があるかを示すものだ。マイナス見通しでも、実際に電気が足らない状況になると、節電要請など様々な対応をとるので停電は起こりにくい。
ただ、予想外の気候の悪化や発電所のトラブルなどが重なれば、大規模停電が起きる恐れもある。
一部の電気料金が急騰する懸念もある。昨年12月~今年1月には想定を上回る寒波に、火力発電の燃料の液化天然ガス(LNG)の不足が重なった。卸電力市場の価格は一時、前年同期の10倍以上に高騰。市場から電気を買っている新規参入の電力会社には打撃となった。市場価格と連動する一部の料金プランでは料金が上がり、契約者の負担増につながった。
経産省は、使用量が増える夏と冬の電力需給を、大手電力の管内ごとに検証している。梶山弘志経産相は14日の会見で「夏は安定供給に必要な供給力はかろうじて確保できるが、冬は現時点で東京電力管内で必要な供給力が確保できない」と述べた。
経産省は近く、火力発電所の修繕時期をずらして冬のピーク時に稼働させるなど、供給力の確保策を示す。特に需給が厳しい東電には、自前の電源を持つ事業者や、電気の使用を控える事業者を早めに探しておくことも求める方針だ。家庭や企業には省エネを促し、本格的な節電要請は今後の状況を見て検討する。
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大手電力には需要に基づいて…
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2021-05-23 21:00:00Z
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