米住宅価格の上昇が加速している。29日発表の全米の住宅価格指数は前年同月比14.6%の上昇と、2005年9月(14.5%)を上回り、42年ぶりの伸び率を記録した。05年の住宅価格高騰はのちにリーマン・ショックにつながった。05年のような複雑な債務膨張は起こっていないものの、異例の急上昇への警戒も高まっている。
記録的な伸びとなったのは代表的な米住宅価格指数であるS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数(全米)だ。伸び率が高まるのは2020年6月から11カ月連続で、文字通り価格上昇が加速している。価格も過去最高を毎月塗り替えており、5年前と比べると4割近くも値上がりした。
14.6%の伸びは1987年の統計公表以来、最大の伸びだ。指数を開発したエール大のロバート・シラー教授らが過去にさかのぼった計算によれば1979年10月(14.8%)以来、実に42年ぶりの大きさとなる。最近の急騰はシラー教授自身も「インフレを加味すると、これまでに経験のない上昇だ」と指摘する。
都市部、郊外を問わず、幅広い地域で値上がりが進んでいる。なかでもアリゾナ州フェニックスやカリフォルニア州サンディエゴ、ワシントン州シアトルなど、新型コロナウイルス前から人気だった都市は前年同月比で2割以上も上昇している。
新型コロナウイルスの流行後、在宅勤務が普及したため、郊外の中古住宅の値上がりが目立っている。木材価格の高騰や人手不足による建築の遅れも相まって、住宅の需給が逼迫している。
都市部でも値上がりは加速している。4月の前年同月比の上昇率はニューヨークで13.5%、ロサンゼルスで14.7%と高い。住宅ローン金利が歴史的に低い一方、株高や経済対策で家計の懐は潤っている。投資目的で高級住宅を買う動きも多い。ニューヨーク郊外で富裕層の多く住むコネティカット州グリニッジでは数億円もの高級物件が売りに出ても「すぐに買い手がつき、空き物件は常に少ない」(不動産仲介業者)という。
米連邦準備理事会(FRB)はこれまで住宅価格の上昇を注視しつつも、「金融システムの安定を揺るがすものではない」(パウエル議長)としてきた。05~06年の住宅バブルのように信用力の低い個人への住宅ローンが急増しているわけではない。住宅ローンを担保にした複雑な証券化商品も乱造されていないためだ。
だが、FRBでは警戒論も出始めている。FRBは資産購入の一環で米国債のほか、不動産ローン担保証券(MBS)も月に400億ドル買い、住宅ローン金利の上昇を抑えている。ダラス連銀のカプラン総裁は「この購入には意図せぬ結果や副作用がある」と指摘するなど、大規模購入の継続には慎重論も増え始めた。
05~06年のように債務が複雑に膨張していないとはいえ、住宅価格は株価以上に幅広い国民の経済活動に影響を及ぼしうる。過熱が行き過ぎると、その後の調整も大きくなる。住宅価格の高騰は金融市場の長い目で見たリスク要因として意識する関係者もじわりと増えている。(ニューヨーク=後藤達也)
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2021-06-29 20:28:47Z
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