社名の由来はブドウ農家。新たなグループシンボルマークは八ケ岳や富士山の山々に建つお菓子の家。どこまでも山梨の大地に根ざした、甲府市の和洋菓子大手シャトレーゼホールディングス。消費者物価の上昇率が40年ぶりの歴史的水準となる中、価格維持を宣言した。ふところ事情の厳しい聖夜のテーブルへ今年もクリスマスケーキを届ける。
価格据え置き宣言
「来年3月までは絶対に値上げしない」
斉藤寛会長は今月7日、産経新聞のインタビューにこう言い切った。御年88歳だが、「体組成計で計ると体力年齢は60代」と言う。
クリスマスケーキの季節がやってきた＝相模原市中央区のシャトレーゼ清新店今年5月、食品の値上げラッシュが続く中で価格据え置きを宣言。大きな話題を呼んだ。斉藤さんは「原材料価格の上昇は5月に比べても数段進んでいるが、この間に消費者の収入が増えない」と指摘。「同時に、この苦境を乗り切ることが企業の体質を強化させる」と強調した。
帝国データバンクの調査で、今冬のクリスマスケーキの平均価格（税抜き）は前年より209円高い4040円。シャトレーゼの姿勢は消費者に支持され、今冬のクリスマスケーキの販売は80万台（ホール）と前年の3割増しの見通しだ。
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始まりは今川焼き
斉藤さんは昭和9年、旧勝沼町（現甲州市）にブドウ農家の長男として生まれた。20歳の時、甲府市内の約4坪の土地で今川焼き風の菓子専門店「甘太郎」を創業。「菓子職人でなく、常に消費者目線でチャレンジしてきた」と振り返る。
シャトレーゼのロードサイド型店舗＝山梨県笛吹市（平尾孝撮影）42年、後に看板商品に成長するアイスクリーム事業と合併し、シャトレーゼに社名を変更。家業にちなんで、フランス語の「シャトー（城）」と「レザン（ブドウ）」を合わせシャトレーゼ（ブドウの城）という社名が生まれた。
洋菓子は手作りが当たり前だったその時代、アイスクリーム生産のノウハウを使い、シュークリームの大量機械生産に乗り出した。
しかし、小売店に冷蔵ケースが普及しておらず、販路に困った。「冷蔵ケースがなくてすむよう、店頭に置く時間を短くする」。シュークリームは安いものでも1個50円という時代に、1個10円で売り出した。
「1箱50個で5箱250個が基本。売れなかったら捨てても構わないからと、店に置いてもらうと飛ぶように売れた。早く次を持ってきてと注文が入った」
菓子業界の「当たり前」ではない、独自のアイデアが成長を牽引していく。
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ユニクロと共通点
同社の経営哲学を体系化したのが独自の「ファームファクトリー構想」だ。問屋を通さず、直接農家から原材料を調達。自社店舗へ自らの物流網で直接運び、販売する。これは「製造小売り」と呼ばれるユニクロと同様の仕組みで、在庫の最小化などによりコストを削減し、削減効果を商品の低価格化につなげる。
シャトレーゼホールディングスの斉藤寛会長（平尾孝撮影）さらに、生菓子では通常、製造から販売まで5日はかかるとされる工程を2日間に短縮でき、味が落ちない。イチゴなどの果実も完熟したものが使え、さらにおいしさの差別化につなげることができるという。
低価格なのに、おいしい。見た目もよい。3拍子そろった同社はロードサイドを中心に店舗を広げ、今年9月には秋田県へ再進出。沖縄を除く46都道府県での店舗展開を果たした。
「いまや山梨を代表する全国区企業」と甲府商工会議所の進藤中会頭が話す同社を、一代で育て上げた斉藤さんは「現在の国内約700店舗を2千店舗に増やせる」と意欲は衰えない。
とはいえ、このカリスマ経営者のDNAをいかにしてつないでいくかは大きな課題でもある。（平尾孝）
【シャトレーゼ】 昭和29年創業。42年にシャトレーゼに社名変更し、平成22年に持ち株会社化。主力の菓子製造販売のシャトレーゼを中心に、グループ企業でワイナリー、ホテル、ゴルフなどを展開する。シャトレーゼ単体の令和4年3月期の売上高は1千億円、従業員1800人。
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2022-12-11 22:00:00Z
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