鉄鋼大手「JFEスチール」の東日本製鉄所京浜地区(川崎市川崎区)は16日未明、鉄鉱石を溶かして銑鉄を生産してきた「扇島第2高炉」の稼働を休止した。鉄の需要減による鉄鋼業界の再編や産業構造の変化を背景にした事実上の廃炉。約20年前に休止した第1高炉とともに京浜工業地帯の象徴として日本の高度成長を支えた火が消え、地元では「一つの時代が終わった」との声が聞かれた。(松崎美保、中山知香、松岡妙佳)
午前9時半頃、上空を飛んだ本社ヘリからは、稼働を止めて約6時間が経過しても水蒸気が立ちのぼる高炉の様子が見えた。同地区の古米孝行所長は「(前身の日本鋼管時代から)100年以上受け継いだ高炉の火が消えることは残念」とのコメントを発表した。
「本当に止まったんだ」
稼働を止める瞬間に立ち会った男性社員(60)は、時代の終わりをかみしめた。社員らは静かに高炉休止を見届け、昔の苦労話などを語り合ったという。
男性は1982年、日本鋼管に入社。石炭を炉に入れる仕事を担当し、海外の石炭の分析もした。社員や元社員、その家族らが近くに住み、町はにぎわった。
川崎製鉄と統合してJFEスチールが誕生してからは、出身会社による企業文化の違いに戸惑ったことも。リーマン・ショックも乗りこえて働き続けてきたが、高炉休止の方針が2020年3月に発表されたときは「前触れもなく、ショックが大きかった」。今後も業務はあり、生活が大きく変化するわけではないが、納得のいかない部分もある。「京浜地区は日本鋼管の原点。本当に止めなければいけなかったのか」
日本鋼管で約30年間勤務し、製鉄の研究開発に詳しい東北大名誉教授の有山達郎さん(74)は「製鉄のために作られた扇島の製鉄所は、有害ガスを排除するなど環境を重視しつつ最新技術を取り入れてきた」と強調。今後は跡地が活用されるが、「JFEスチールが主導して熟練人材や資源を活用し、世界の模範となるような、水素などを使った次世代の製鉄モデルを実現してほしい」と期待している。
高炉の休止によって、社員約1200人、取引先企業の従業員約2000人に影響が及ぶと見込まれている。ある関連会社の男性社員(40)は、高炉休止の影響で自社の事務所が閉鎖するという。近く、別の事務所に異動する予定だが、社内の混乱のためかいまだに異動先が示されていない。「不安だ」とこぼす。
東京商工リサーチの調査によると、高炉休止による倒産は現時点まで確認されず、小規模事業者で後継者難などによる廃業が多少あった程度。高炉休止が発表されたのは今から3年半も前だったが、取引先企業の間では発表前から休止のうわさがあり、規模縮小、取引先や事業の移転などが進められていたという。
同横浜支店の森沢章次課長は「発表から休止まで一定期間を置いたことで関係先が準備でき、影響を最小限にできた」と指摘。「社内外への配慮が見えたのは、SNSの普及もあり、社の評判を落とさないリスク管理の側面もあるのではないか」と分析している。
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2023-09-16 20:00:00Z
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