かんぽ生命保険で新旧の保険料の二重払いなど、顧客の不利益になる保険の乗り換えを繰り返していたことが相次ぎ発覚した。背景には、契約件数偏重のノルマによって局員の倫理観が損なわれ、不適切な販売を防ぐための体制も不十分だったことがある。金融庁も問題視しており、日本郵政グループ全体でのコーポレートガバナンス(企業統治)体制の再構築が求められる。
かんぽ生命の保険は全国2万局超の郵便局で販売される。営業目標は各郵便局と各局員に割り当てられ、過大なノルマとなっているとみられる。平成27年に局員の基本給を約1割下げ、手当の比率を高めたこともノルマ偏重に拍車をかけたもようだ。
今年4月には新規契約重視の評価を改め、契約の継続率を重視する仕組みを導入した。だが、ノルマ偏重が改善したかは不透明だ。日本郵政の長門正貢社長はノルマ廃止の検討を示唆する。
不適切な販売を防げないかんぽ生命の体制にも問題がある。大手生保では、二重契約の疑いがある場合はチェック機能が働いて直ちに営業に確認が入り、契約者の不利益を防ぐ仕組みがある。だが、かんぽ生命はこうした仕組みが乏しい。「“半官半民”で信用が高いので、組織として法令順守のためのインフラ投資などを進める意識が低いのではないか」と大手生保の関係者は指摘する。
生保業界では17年以降に相次いで保険金の不払い問題が発覚し、生保各社は行政処分などを機に無理な新規契約の獲得を防止する施策を進めてきた。だが、かんぽ生命は蚊帳の外だったため、民間に比べると企業統治に甘さがあることが問題の根底にある。
一連の問題は長引く超低金利といった厳しい収益環境も影響していそうだ。日本郵政グループは利益の大半を金融事業で稼ぐ収益構造だが、かんぽ生命では契約獲得が進まず、日銀の超低金利政策で運用難にもあえいでいる。業績が厳しさを増す中で、営業偏重に傾いていったとみられる。
日本郵政はかんぽ生命株を65%程度保有するが、郵政民営化法では完全売却が目標となっている。かんぽ生命が高い販売目標を設定するのも、完全民営化を見据えて収益を安定させたい事情もあったとみられるが、不適切販売による信用失墜によって、完全民営化が遠のく可能性がある。(万福博之)
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2019-07-09 12:49:00Z
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