セブン&アイ・ホールディングスは9日、傘下のイトーヨーカ堂が衣料品事業から撤退することを決めた。幅広い商品を手がける総合スーパーの運営は行き詰まっており、食料品中心に事業を絞る。売り上げが低迷する地方では閉店を加速させ、抜本改革に挑む。(鈴木英樹)
「改革を検証する中でグループの強みは食であると気づかされた。食を中心にもう一度強化したい」。電話記者会見で、セブン&アイの井阪隆一社長は構造改革の方針を説明した。自社での衣料品の製造や企画をやめ、魅力的なテナントを誘致して集客力を強化する。グループのセブン―イレブンとの相乗効果も期待する。
イトーヨーカ堂はこれまでも構造改革を繰り返してきた。2015年には不採算店舗を中心に約40店を閉鎖する方針を表明。19年にも約30店で閉鎖や食品スーパーとの連携を進める計画を示した。それでも、直近は2期連続で最終利益が赤字だった。
9日の決定により、すでに計画している19店の閉鎖に14店が加わる。イトーヨーカ堂の山本哲也社長は「利益性、効率性のレベル感が低いことの反省から、一歩二歩踏み込んで抜本的な変革が必要だ。背水の陣だという覚悟で取り組みたい」と強調した。
イトーヨーカ堂はセブン&アイの祖業で、100年を超える歴史がある。食料品から衣料品、日用品まで何でもそろう総合スーパーとして、地域に根ざしてきた。
2000年代以降は、ユニクロやニトリといった価格は安くても良質な商品を扱う専門店が席巻するようになり、苦戦を強いられた。ネットスーパーを始めとするデジタル戦略でも出遅れた。衣料品は開業当初から取り扱っており、改革案に「撤退」の文字を盛り込むかどうかは最後まで迷いもあった。内部からは、「プライドや雇用もあって、衣料品はやめられない」との声も聞かれた。
だが、株主である一部のファンドから、収益力の高い国内外のコンビニエンスストア事業に注力することを迫られるなど、外堀は埋まっていた。
新たな構造改革が奏功するかは不透明だ。外部からは「今回も結局は過去の改革と似た方向性だ。二度あることは三度あるにならないか心配だ」(アナリスト)との声も漏れる。
セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は9日、米ファンドへの売却手続きを進めている傘下の百貨店「そごう・西武」について、「従業員の雇用は継続を図る。当社グループにおける受け皿の準備も進めている」と述べた。
そごう・西武の売却を巡っては、セブン&アイの株主が、雇用の守られない恐れがあるなどとして、差し止めを求めている。井阪氏はそごう・西武に約3000億円の借入金があることも明らかにした。「これ以上の資金支援は非常に厳しい」と売却を決めた経緯を説明した。
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2023-03-09 22:34:44Z
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