Kamis, 30 Mei 2024

コラム:トリプル安が暗示する日本経済の先行き、日銀利上げ判断もより慎重に - ロイター (Reuters Japan)

コラム:トリプル安が暗示する日本経済の先行き、日銀利上げ判断もより慎重に

 5月30日の東京市場で起きた現象は、ドル/円が157円台の円安になっても日経平均が一時900円を超えて下落するとともに、長期金利が1.1%まで上昇するという円建て資産のトリプル安だ。1月23日、日銀本店前で撮影(2024年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[東京 30日 ロイター] - 30日の東京市場で起きた現象は、ドル/円が157円台の円安になっても日経平均(.N225), opens new tabが一時900円を超えて下落するとともに、長期金利が1.1%まで上昇するという円建て資産のトリプル安だ。長期金利の上昇が株安に結びついたところが今回の特徴だろう。「日本売り」の予兆と言えるかもしれない。

円安が国内物価を押し上げて個人消費に冷水をかける構図になっており、5%を超える賃上げが本当に消費を押し上げるのか不透明になってきたところに、長期金利が約13年ぶりの水準まで上昇し、企業サイドへのマイナス効果も意識されて株安になった側面もある。内需全般に不透明感が出てきたことで、利上げを模索する日銀の判断が秋以降に後ずれする可能性が高まってきたと筆者はみている。

<長期金利上昇が株安とリンク>

東京市場に大きな影響を与える29日のNY市場では、米金利の上昇が大きな原動力となり米株下落、ドル上昇につながった。米利下げ時期の先送り観測が米連邦準備理事会(FRB)高官発言で盛り上がり、金融政策の影響を受けやすい2年米国債利回りは一時5%まで上昇。長期金利も4.6%台まで上がり、ドル上昇のエンジン役を果たした。

30日の東京市場でもドル/円は157円台を維持。一部で介入警戒があるものの米財務省は日本の介入実施に距離を置いているとの観測も根強く、このままじりじりと円安が進むとの思惑が再浮上しつつある。

こうした中、目を引いたのは157円台の円安にもかかわらず、日経平均の下げが広がったことだ。円安を実体経済への効果よりも「過大」に評価してきた株式市場が、いよいよ円安の副作用にも目を向け始めた可能性があると言える。

1つは、円安による物価高への影響で消費抑制効果が想定よりも大きく出ることへの懸念だろう。消費財を主力商品とする企業にとって値上げでトップラインを押し上げることが前年同様に行えるのかという不透明要因が浮上している。

そうした中での長期金利の上昇はこのところピッチが速く、個人の住宅ローン金利だけでなく、設備投資など企業経営全般にも負担になるのではないかとの懸念も出て、日本株下落の一因になっているとの指摘が一部の市場関係者から出ている。

昨年の米国でも見られたように、金利が上昇しても経済の先行きに明るさが見られれば、株価の下落は一過性となり上昇に転じる。しかし、長期金利の上昇が経済の足を引っ張ってしまうのではないかと思わせる「景気の不透明さ」があると、株価は調整色を強めてしまうだろう。

30日のトリプル安が本格的な日本売りにつながるかどうかは、この先の日本経済の展開次第だが、2024年1─3月期のマイナス成長に続いて4―6月期もゼロ成長ないし極めて小幅のプラス成長にとどまりそうだということになれば、海外勢の日本株買いが止まって推進力を失う展開も予想される。

また、GDPの停滞が継続するようなら、税収の伸び悩みと財政赤字の拡大が同時に起こることを理由として、格付け機関が日本国債の格下げを検討し始めるというシナリオの現実味も高まるだろう。

<円安と賃上げ、より慎重に見極めたい日銀>

一方、日銀は展望リポートで示した見通し通りに経済が進展すれば、緩和効果を調整するという目的で利上げを検討する可能性を示してきた。だが、足元までのぱっとしない消費の現状に円安起点の物価上昇が加わった場合、これから発生する賃上げの効果や定額減税による景気刺激効果がそれを上回るのか、慎重に見極める必要が出てきたように筆者には映る。

日銀は新たな円安起点の消費抑制効果と消費を押し上げる賃上げと定額減税のプラス効果が、全体としてどうなるかを秋ごろまで待って判断するのではないか。

ただ、市場で思惑が高まっている国債買い入れ減額の方針決定は、その政策判断とは切り離されて検討されるだろう。

日銀は「不透明な内需」という雲の中に入ってしまったようだ。

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2024-05-30 09:10:33Z
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