Selasa, 27 Februari 2024

コラム:ドル152円突破の現実味、日米金融政策の影響色濃く=内田稔氏 - ロイター (Reuters Japan)

[28日 ロイター] - ドル/円が3カ月ぶりに150円台を回復している。円安が株価上昇に一役買っているとあって、いわゆる「悪い円安論」が影を潜めているが、介入への警戒から上値も重いようだ。

そこで本稿では円安の良し悪しを改めて整理し、2022年、23年と続けて跳ね返された152円台に達する可能性を展望する。

<交易条件の悪化、家計を圧迫>

連日、日経平均株価(.N225), opens new tabの騰勢が報じられる一方、国内景気にはどこか閉塞感も漂う。輸入インフレを主因に実質賃金の目減りが続いており、家計が圧迫されているためだろう。2023年も後半にかけて個人消費が失速し、2四半期続けてマイナス成長を記録した。円安局面では、総じて輸出物価より輸入物価の方が上がりやすく、交易条件(=輸出物価指数÷輸入物価指数)が悪化する。

資源価格の騰勢が和らいだ結果、2022年より縮小したが、それでも昨年の交易損失は約11.1兆円と過去最大規模となった。この交易損失は、その分だけ実質国内総所得(GDI)を下押しする。GDIに約34兆円の海外で得た所得を加えると国民総所得(GNI)となるが、この所得の多くはもっぱら企業がその受け皿だ。

しかも、日本の家計の金融資産に占める株式や投資信託の比率は1割台と欧米に比べて極端に低く、資産効果も働きにくい。

以上を踏まえると、株高が象徴する通り、円安は企業にとっては追い風だが、物価高を上回る賃上げがなければ、家計にとっては強い逆風と整理できる。

<円安のメリット>

一方、インバウンドの観点から円安を歓迎する声も聞かれる。2023年の訪日外国人は約2506万人を数えたが、インバウンド消費は約5.3兆円と過去最高を記録しており、地方経済への波及効果も期待される。

インバウンド消費は、国民経済計算上、サービスの輸出に該当するため、品目別の輸出額と比べると、インバウンド消費は最大の自動車(約17.3兆円)にこそ及ばないが、2番手の半導体等電子部品(約5.5兆円)に匹敵する。しかも、2024年は訪日外国人の増加が見込まれており、インバウンド消費は自動車に次ぐ輸出産業に発展する公算が大きい。

<為替介入の効果>

もっとも、先述の交易損失や輸入インフレなどに照らせば、ドル/円が一段高となるにつれて、為替介入の可能性は高まるだろう。問題は、その円安抑制効果と言えるが、前回のコラム「マイナス金利解除後の円高を阻む高い壁」でも示した通り、その点が疑わしい。

なぜなら、ドル高局面で実施された2022年9月の介入の後、ほどなくして他の通貨ペアよりもドル/円の上昇率の方が高くなった。ドル安局面で行われた翌10月の介入の後も、早い段階で他通貨ペアとドル/円の下落率に大差がみられなくなった。

もちろん、為替介入がなかった場合との比較は不可能であり、効果を否定するものではないが、それでも円安を止めるのは円の弱点克服であって為替介入ではないだろう。そのことは、為替介入が実施された2022年当時よりも現在の方が円安であることからも明らかだ。

円の弱点とは、具体的にはマイナス圏に位置する日本の実質金利であり、そこが変わらなければ円は下落圧力を受け続けると考えられる。

<This time is different>

では、今回は152円台に達するだろうか。結論を言えば、その可能性は低くない。なぜなら、市場における米国の金融政策に対する見方が、過去2回の局面と明らかに異なるためだ。例えば、2022年10月の場合は、翌11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)において利上げペースの調整や減速が議論されるとの観測報道に、おりからのドルに対する高値警戒感も加わり、ドル高がピークアウトしてドル/円も反落した。

2023年の場合も11月のFOMC後の記者会見にてパウエル議長が長期金利の上昇によって追加利上げの必要性が低下する可能性に言及し、ハト派と受け止められた。続く雇用統計や消費者物価指数(CPI)も予想を下回り、米経済の減速感が意識された。そこに、タカ派とみられてきたウォラー理事から利下げ容認とも取れる発言がきかれた結果、やはりドルが反落した。

このように、いずれのケースもドル/円が152円台を目前にして失速したのは、米国の金融政策への見方がハト派方向へとシフトし、ドルが下落した結果だ。

ところが、足元の状況は全く逆といっていい。年初来の強めの経済指標により、昨年終盤にドルを下押しした利下げ期待が後退しつつある。何かをきっかけに、ドル高が再起動しても不思議ではない状況と言え、その際、ドル/円も素直につれ高となる公算が大きい。

しかも、ドル高による新興国経済への悪影響が危惧された2022年の秋に比べ、現在のドル指数は当時より9%以上も安い。ここから多少ドル高が進んだところで、それが直ちに国際問題へと発展する状況にもない。

<ドル/円上方ブレーク、3月FOMCが契機の可能性>

その点、予想を上回る物価関連の経済指標はもちろんのこと、特に3月のFOMCにおける政策金利の予想分布図、いわゆるドットチャートはドル高再起動のきっかけとなり得る。

昨年12月のドットチャートでは、2024年末の中央値が昨年9月の4.875%から4.625%へ下方修正された結果、市場はハト派ショックに包まれた。2024年の利下げ回数が1回分だけ上乗せされるとの見方からドル指数とドル/円がそろって急落した。

しかし、19人の回答を加重平均すると昨年9月に比べて約9bp低下したに過ぎない。実際には2024年の最適な利下げ回数を2回とみるか、3回とみるか、参加者の間でもかなり拮抗した状況だったことがわかる。4.625%に投じた参加者の中から2人が4.875%へ翻意するだけで、中央値は再び4.875%に戻る。その場合、相応のドル高ショックが見込まれる。

<マイナス金利解除も円安継続か>

また、日銀がマイナス金利の解除に踏み切る場面にも注意を要する。マイナス金利の解除は時期の見方こそ違っても、市場では織り込み済みと言え、注目はその後の政策スタンスや利上げパスにシフトしている。

その点、日本経済の需給ギャップがまだマイナス圏(=需要不足)にとどまっていることから、上向きのトレンドを重視すると発言した植田和男総裁であっても、持続的な利上げ局面入りを宣言する可能性は低い。

むしろ、実質金利がマイナスにとどまる点を示しながら、金融緩和が続く点を強調する可能性が高いのではないか。それはまさに円にとって最大の弱点が温存されることを強調するに等しく、円安期待の再燃を招くおそれがある。

<152円に天井はない>

こうしてみると、これまで152円の手前で跳ね返されたのは、そこに分厚い天井が存在しているからではなく、ドルの反落に助けられた面が強い。為替介入の可能性はあるが、スムージングオペレーションにとどまるとみられ、円安を止める決定打とはならないだろう。

今後、日米ともに最高値を更新した主要株価指数の調整リスク、米国を中心とする商業用不動産市況の低迷とそれに起因する中小金融機関への不安、長引く中国の景気低迷、様々な地政学リスクなどに細心の注意を払いつつも、ドル/円のリスクがアップサイドに傾いているとの認識が必要ではないか。

編集:田巻一彦

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*内田稔氏は、高千穂大学商学部准教授、FDAlco外国為替アナリスト。慶應義塾大学卒業後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2012年から2022年まで外国為替のチーフアナリスト。22年4月から現職。J-money誌の東京外国為替市場調査では2013年より9年連続個人ランキング1位。国際公認投資アナリスト、証券アナリストジャーナル編集委員、公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、経済学修士(京都産業大学)。

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2024-02-28 01:36:00Z
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