16日の米国株式市場は反落。注目されていた1月の米生産者物価指数(PPI)統計が消費者物価指数(CPI)に続いて予想を上回る伸びととなり、米金融当局は利下げを急がないとの見方が強まった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5005.57 | -24.16 | -0.48% |
ダウ工業株30種平均 | 38627.99 | -145.13 | -0.37% |
ナスダック総合指数 | 15775.65 | -130.52 | -0.82% |
PPI統計はサービス価格の大幅な上昇が影響し、根強いインフレ圧力を浮き彫りにした。米金融当局が目標達成までの「ラストワンマイル」に格闘する中、相場全体に買い意欲は乏しかった。
米PPI、1月は総合とコアがともに予想上回る-インフレ根強く (2)
インディペンデント・アドバイザー・アライアンス(IAA)の最高投資責任者(CIO)、クリス・ザッカレリ氏は「今週は荒れ模様だ」と指摘。「データが大きく上振れ、もしくは下振れた場合に、市場が反射的な反応を示すのは理解できるが、このパターンが続いて新たなトレンドが確立するか、もしくは今週のデータが単なる異常値だったかを確認するには、あと数回のデータを待つ必要があるだろう」と述べた。
ブック・リポートの著者、ピーター・ブックバー氏は「インフレ鈍化の道のりはそれほど完璧なものではない」とした上で、「米金融当局が今年利下げに踏み切る唯一の理由は、失業率が顕著に4%を上回った場合であり、それ以外にはないと考え始めている」と語った。
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長らは、政策緩和に踏み切るかどうか慎重に見極める姿勢を示している。今年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つ地区連銀総裁2人はこの日、インフレの進展が続けば、今年3回の利下げを行うことにオープンな姿勢を示した。
米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、年内3回の利下げ予想は「妥当な基本ライン」であると指摘。米アトランタ連銀のボスティック総裁は、インフレ統計が改善すれば、自身が現時点で望ましいと考えている2回ではなく、3回の利下げも「確実にあり得る」と述べた。
一方、サマーズ元米財務長官は、最新のデータで明白に見られる根強いインフレ圧力は米金融当局の次の行動が利下げではなく、利上げになる可能性を示唆しているとの考えを示した。
市場の想定よりも高金利が長期化する可能性があるにもかかわらず、週間ベースで米国株の下げは小幅にとどまった。
シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏によると、投資家は強気のモメンタムに乗り、好調な決算と人工知能(AI)を巡る楽観論に意識を集中させることを選んだ。
「だが、大手ハイテク7銘柄で構成する『マグニフィセント・セブン』の一角は極めて割高な水準に達しており、目先に調整が入るリスクは常にくすぶる」とラザクザダ氏。「エヌビディアは向こう1週間に同グループで最後の決算発表を控える。楽観論の大部分は、すでに株価に織り込み済みのため、ハイテクセクターで何らかの調整が起きてもそれほど驚きではない」と話す。
国債
米国債利回りは上昇。朝方発表されたPPI統計の上振れを受けて年内の米利下げ観測が後退し、利回りは年初来の高水準に向けて跳ね上がった。ただ、その後は上げ幅を縮める展開となった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.44% | 2.9 | 0.66% |
米10年債利回り | 4.28% | 5.3 | 1.26% |
米2年債利回り | 4.64% | 7.0 | 1.52% |
米東部時間 | 16時48分 |
米国債利回りは今週、予想を上回る伸びとなったCPI統計を受けて年初来の高水準に上昇。金融政策見通しの変化に最も敏感な年限の利回りはこの日、これをさらに上抜けた。2年債利回りは一時14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の4.72%。5年債利回りも年初来の高水準を更新する一方、長期債は今年の高水準を更新するまでは至らなかった。
FOMCに連動する金利スワップ契約が織り込む6月利下げの確率は、100%近くから88%程度に切り下がった。年内の予想利下げ幅は約85bpまで後退。米金融当局が昨年12月時点で示していた75bpの予想にさや寄せしている。
みずほ証券USAのエコノミスト、スティーブン・リッキート氏はブルームバーグテレビジョンで「どの程度の米利下げが妥当なのか」、市場は考慮する必要があると話す。その上で「問題は利下げが(年内に)3回もしくは3回未満かであって、3回を超えるかではない」とした。
BTIGの金利トレーディング共同責任者トマス・ディ・ガロマ氏によると、「利回りの上昇局面では機関投資家による買い戻しが入る」ため、利回りは当初の高水準からは押し戻された。10年物利回りの100日移動平均である4.33%の水準も「買いの好機ゾーン」になっているという。
為替
外国為替市場ではドル指数が小幅高。PPI統計の上振れで、国債利回りが上昇したことが追い風となった。週間ベースでは7週連続上昇と、昨年9月以来の長期連続高となった。
この日の円は一時、1ドル=150円65銭まで売られた。週間では7週連続の値下がりで、2022年10月以来の長期下落局面。ただ、日本の通貨当局による介入への警戒感もあり、2023年につけた151円91銭までの円安・ドル高には至っていない。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1244.08 | 0.20 | 0.02% |
ドル/円 | ¥150.20 | ¥0.27 | 0.18% |
ユーロ/ドル | $1.0776 | $0.0004 | 0.04% |
米東部時間 | 16時58分 |
スコシアバンクのショーン・オズボーン氏は、この日発表された米経済指標について「米国債利回りが当面高止まりすることを示唆しており、ドルの基調を支えている」と指摘。その上で「依然としてドルが全体的にやや過大評価されていると考えている。そのため、ドルはしっかりの展開となるだろうが、必ずしも大きくドル高に振れるというわけではない」と述べた。
原油
ニューヨーク原油相場は続伸し、年初来高値で引けた。PPIを受けて利下げ観測が後退したが、原油市場では中東での緊張悪化が材料視された。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=79ドルを上回って終了。レバノンを拠点とする親イラン民兵組織ヒズボラの指導者ナスララ師は、イスラエルとの戦いをエスカレートさせると発言。世界の原油生産の約3分の1を占める地域でのリスクが高まった。
シティー・インデックスの市場アナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は顧客リポートで、「先週大きく上昇した原油価格だが、今週はかなり不安定な値動きだ。ドル高が足を引っ張っている部分もある」と指摘。その上で「総じて、原油相場に関するリスクは上方向に傾いていると考えられる。価格にマイナスの影響を与えるような要素はあまりないためだ」と記した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物3月限は前日比1.16ドル(1.5%)高の1バレル=79.19ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント4月限は61セント上げて83.47ドル。
金
金先物相場は続伸。ただ週間べースでは2週連続の下落となった。米経済データでインフレの根強さが示され、金融当局は利下げを急がないとの観測が強まった。
高めの金利が長期化するとの見方から金スポット価格は今週前半、1オンス=2000ドルを割り込んだ。その後、15日には小売売上高統計が大幅減となったことなどに反応して反発。16日はPPI発表後に一時下げ、2000ドルを下回る場面があったが、その後再び上げに転じた。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は、最初の利下げが実施されるまで、金の短期的な方向性は「今後発表される経済データと、それがドルや利回り、そして特に利下げ期待に与える影響に左右されるだろう」と分析。
このほか、金市場では「短期的なモメンタム戦略による売りと、中央銀行や個人投資家による継続した現物需要とのせめぎ合い」が見られるとも指摘した。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時49分現在、前日比7.55ドル(0.4%)高の1オンス=2011.95ドル。週間では0.6%下げている。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物4月限は9.20ドル(0.5%)上昇の2024.10ドルで引けた。週間では0.7%安だった。
原題:Wall Street Ends Wild Week on Sour Note After PPI: Markets Wrap
Treasury Yields Reach Year-to-Date Highs as Rate-Cut Hopes Wane
Dollar Heads for Seventh Weekly Gain; Franc Lags: Inside G-10
Oil Advances to 2024 Highs as Middle East Tensions Escalate
Gold Set for Second Weekly Loss as US Data Show Sticky Inflation (抜粋)
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2024-02-16 22:04:00Z
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