既にニューヨークと日本の銀行を直撃している米商業用不動産市場の問題は今週、欧州にも飛び火し、影響拡大への懸念を強めている。
直近ではドイツ金融機関のドイチェ・ファンドブリーフバンク(PBB)も犠牲になった。不動産セクターへのエクスポージャーに対する懸念から社債が急落した。同行は7日に「不動産市場の低迷が続いている」ため引当金を積み増したと予定外の発表を行い、現在の混乱を「金融危機以来最大の不動産危機」と表現した。
金利上昇によって世界中の不動産の価値が低下したことで融資が不良債権化し始め、銀行は不動産所有者や開発業者への貸し付けに対する引当金を増やしている。
新型コロナウイルス禍後の職場復帰がなかなか進まない米国のオフィスでは、価値破壊が特にひどい。そして、その影響はまだ完全には織り込まれていないかもしれないとの予測もある。グリーン・ストリートのアナリストによれば、今年はさらに15%の評価減が必要になる可能性がある。
「評価額は依然として高過ぎる。このような評価額に基づいて決定を下している金融機関は、減損の可能性が高くなり」、その結果、一部の金融機関は「試練」に直面する恐れがあるとアナリストらはリポートで指摘した。
ドイツの銀行の社債急落は、不動産を巡る一連の警鐘の一つだ。米地銀持ち株会社ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)は先週、予想外の減配と商業用不動産ローンの問題債権化に備える貸倒引当金積み増しを公表。ムーディーズ・インベスターズ・サービスは6日、同行をジャンク級に格下げした。
- 米銀NYCBジャンク級に転落、信用悪化で再格下げも-ムーディーズ
ラボバンクのクレジットストラテジスト、ポール・ファンデルべスタウゼン氏は「米国の商業用不動産市場には深刻な懸念がある。米国や欧州の大手銀行にとっては問題ではないが、不動産に特化したドイツの中小銀行はやや痛みを感じている」と述べた。
クインテット・プライベート・バンクの株式責任者、マーク・デッカー氏は「投資家は現在、個々の金融機関のエクスポージャーに大きな懸念を抱いている。基盤の大きいユニバーサルバンクよりも大きな影響を受けているのは一部の銀行だが、投資家は現在、非常に敏感になっている」と話した。
債券急落
モルガン・スタンレーは6日に顧客に対し、PBBのシニア債の売りを勧めた。ブルームバーグがまとめたデータによると、2027年満期の同債券はその後5セント以上急落し、額面1ユーロに対し約97セントで取引されている。同行のその他ティア1債(AT1債)は6、7両日で15セント下落した。
PBBは7日、2023年通年の貸倒引当金を2億1000万-2億1500万ユーロ(約335億-343億円)に増やしたと発表した。
PBBに対する懸念は、商業用不動産へのエクスポージャーを持つ他の銀行にも広がっている。アーリアル銀行債はここ2日の下落を受け、額面1ユーロに対し76セントで取引されている。
ドイツ連邦金融監督庁(BaFin)は、商業用不動産市場の混乱を監視していると明らかにしたが、PBBについてのコメントは避けた。
- ドイツ規制当局、商業用不動産の混乱を監視
ドイツの州立銀行も商業用不動産へのエクスポージャーの痛みを感じている。バーデン・ビュルテンベルク州立銀行(LBBW)など4行は、23年上期に合わせて約4億ユーロの引当金を計上した。
商業用不動産関連の損失がドイツの中小規模の銀行を通じて欧州に波及すれば、08年のサブプライム危機と同じ構図になる。
原題:US Commercial Real Estate Contagion Is Now Moving to Europe (1)、US Commercial Real Estate Contagion Is Now Moving to Europe、US Commercial Real Estate Contagion Is Now Moving to Europe(抜粋)
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2024-02-07 15:23:00Z
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