米ドル高・円安の進行が継続、円は変わらず最弱の通貨
大きな流れとして米ドル高・円安の進行が続いている。
円安なら当然、米ドル高と思われがちだが、ここで言う米ドル高は米ドル全面高であることを強調しておく必要がある。
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逆に言えば、米ドル全面高でも主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が高値圏にあるから、円は最弱の通貨という位置付けは、まったくと言っていいほど変わっていない。
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先週(6月13日~)、「スイスショック」があった。スイス中銀の「大幅利上げ」がサプライズだったため、日銀も軌道修正を図るのでは、といった「偽りの思惑」が急浮上した。
しかし案の定、日銀はまったく動かなかったから、また円売りの規定路線に戻り、米ドル/円はいったん136円後半へのトライを果たしたわけだ。
値ごろ感による判断が氾濫してきたが、日銀が現段階で政策変更することはない
ここまで来て、また値ごろ感による判断が氾濫してきた模様だ。要するに、136円台を超える円安は行きすぎなので、日本政府が介入するとか、あるいは円相場の逆転とか、いろんな思惑が出てきた。
しかし、前述の日銀に関する思惑と同様、本質的に「偽りの思惑」なので、惑わされるべきではない。
スイスの「大幅利上げ」があっても、未だにマイナス金利であることがわかれば、日銀が今の段階において、また円が売られているからと言って政策変更するわけがないことを悟れる。
円安が物価高をもたらしたことは間違いないが、物価高が日本の悲願であったことをまるで忘れたような、マスコミの「大騒ぎ」の方が見苦しい。
デフレは諸悪の源。失われた20年、あるいは30年と言われた日本の停滞は、デフレを脱却できなかったことが根本的な原因であることは、周知のとおりである。
その分、日銀もマスコミから常に叩かれてきたが、皆の悲願である物価高の傾向が定着しているように見えてくると(定着していくかどうかは、なお確信できないから)、日銀はまたひどく批判される。マスコミは、批判するだけでは、巷の庶民の感覚に迎合するばかりで、建設的な役割を果たせない。
何の代償も払わずに、デフレ時代から一気に「よいインフレ」時代になることなどあり得ない
何回も言ってきたように、デフレ克服自体が大変難しく、その代償も大きいはずだ。何の代償や犠牲も払わずに、失われた20年、30年の停滞から一気にバラ色の「よいインフレ」時代入りを果たすなどということは、あり得ない。
この程度の円安や物価上昇を我慢できないなら、日本の若者に将来はないと言い切れる。
円安にしても、物価高にしても、日銀緩和政策がもたらした当然の結果であり、今更いただけない云々と言うこと自体、どうかと思う。
なにしろ、「量的、質的大規模緩和がかなり続いてきたにもかかわらず、物価はいまだに上昇してこない。日銀の大失敗」というのが、以前のマスコミの大体の論調であった。
ところが実際に物価が上昇してくると、マスコミは手のひらを返すように、物価上昇による生活苦を訴え、また日銀批判を展開している。
「円安が日本人を貧乏にする」、今度は大体このような論調を展開。悲しいことに、いわゆる識者の方々からでも、同調する声が多いのが現状である。
しかし、少し冷静に考えれば、本来誰でもわかるように、日本人を貧乏にしたのは円安ではなく、デフレがもたらした、成長なしの失われた歳月であった。
成長しなかった日本の通貨が買われた時期もあったが、それはしょせん偽りであった。
成長の大前提であるデフレ環境からの離脱を実現するには、円安や物価高は当然支払われる代償の一部なので、それを乗り越えなければならない。
成長なしで円高の市況のみ維持したい、あるいはデフレは脱却したいが、物価高が嫌といった「虫のよい」感情論に日本全体が流されると、将来はないに等しい。
政治家みたいな言い方で申し訳ないが、要するに円安が一段と進行するにつれ、国全体が感情論に支配される恐れが大きく、場合によっては10年以上努力し、やっと兆しが見えた日銀の成果(まだまだ道半ば)を帳消ししてしまう可能性がある。
為替相場における政府介入願望の強さに比例し、日本はまたデフレ脱出の好機をつかめなくなるリスクが増大していくから、危機はここにある。
仮に日本政府が為替介入するとなると、将来の円売りの土台を国民の税金をもって構築することになる
相場の話に戻るが、要するにマスコミのあおり、またこれから選挙の焦点にもなりやすい円安の問題は、政治問題になりやすいから、巷の論調に迎合しやすい。
このような雰囲気が強ければ強いほど、日本政府が単独でも為替相場に介入してしまう可能性を否定できない。
もちろん、それは大きな間違いであるが、世論の強さに負ける形の間違いは、民主主義国家だからこそよく見られるパターンだ。
為替介入の有無はともかく、政府や日銀がともに円安のデメリットを認めている目下、相場心理も大きく円安ピーク論に傾く。
デフレ環境からの脱却が長年の悲願であったにもかかわらず、その兆しが見えてきた途端、物価高を円安のせいにして、政府がそれを抑制してほしいという世論自体、的を射ていないから、皮肉にも円安のピークは巷の想定よりはるかに遠いかもしれない。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 月足)
言ってみれば、長期スパンの視点では、マスコミのあおりを受け、日本国民の大半が円安を問題視すればするほど、値ごろ感による判断が正当化され、逆張りの円買いが行われやすいだろう。
その結果、円安を阻止するのではなく、むしろこれから一段と円安の進行に寄与してしまうから、相場の構造が巷の心理を利用する形でさらに強化される恐れが大きい。
そして、仮に日本政府の為替介入があれば、現時点の条件で言えば、失敗に終わると言い切れるだろう。
日銀緩和策の継続(国債急落の恐れがあることから考えて、実際は継続せざるを得ない)、米の当面利上げ継続(実際は大幅な利上げ継続)の環境において、日本政府の単独介入があれば滑稽だ。愚行でしかあるまい。
その分、将来の円売りの土台を国民の税金をもって構築することになるから、あってはならないと思う。
いずれにせよ、円安のデメリットは確かに大きくなってきたが、世論に安易に流されるべきではないことと同様、円安のピークも安易に測るべきではない。市況はいかに。
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2022-06-26 04:34:35Z
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