Selasa, 11 Oktober 2022

今のインフレを見誤る4つの要因 日本は「特殊事情」でより深刻に - ライブドアニュース - livedoor


現在の世界的なインフレは、さまざまな要因が複雑に絡み合って起きている(写真:metamorworks/PIXTA)

日本がすでにスタグフレーションに入っているという前回の記事は、大きな反響を呼びました。現在のインフレは日本のみに起こっている現象ではなく、世界的な潮流であり、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。経済評論家の加谷珪一さんに、新刊『スタグフレーション 生活を直撃する経済危機』をもとに解説してもらいました。

今回のインフレ「4つの要因」

今回のインフレの背景として、次の4つの要因が考えられます。

?原油や食料など1次産品の値上がり
?世界的な需要の拡大
?米中対立やウクライナ侵攻など地政学的要因
?量的緩和策によるマネーの大量供給

?から順に説明していきましょう。


図は原油、天然ガス、食用油、小麦の価格推移を示しています。2015年以降、原油価格は1バレル50〜60ドル程度で取引されていましたが、2020年前半のコロナ危機による下落を経て、2021年から本格的な価格上昇が始まり、2022年には100ドル超えが日常的となっています。約2倍になったわけです。

天然ガスは産地によって価格が大幅に異なるため、各地の価格を平均した相対値で示しています。天然ガスも原油と同様、2021年から値上がりが激しくなっており、コロナ危機前と比較すると、すでに3倍以上になりました。

天然ガスの価格が高騰している背景には、脱炭素の流れがあります。各国は地球温暖化に対応するため、経済の脱炭素化を進めてきました。しかし、大半のエネルギーを再生可能エネルギーで賄うには相応の時間がかかりますから、同じ化石燃料でも二酸化炭素の排出量が少ない天然ガスへのシフトを急ピッチで進めました。そのため、天然ガスの需要が増大し、価格が跳ね上がったのです。

エネルギー価格と食料価格が連動する仕組み

エネルギー価格が上昇すると、たいていの場合、食料価格も上昇します。穀物の生産には相応のエネルギーが必要ですし、輸送にもエネルギーを消費します。たとえば、原油価格が高騰すると貨物船の運航コストが上昇するため、運賃が跳ね上がり、穀類の価格も上がってしまうのです。

肉類も同様です。牛や鶏を育てる飼料の多くはとうもろこしなど穀類から作られています。牛肉1kgを生産するために必要な飼料は10kgを超えると言われており、畜産農家は大量の飼料を購入しなければなりません。結局のところ、エネルギー価格が上がれば穀類の価格が上がり、穀類の価格が上がれば肉類の価格も上がるという図式で、エネルギー価格と食料価格はほぼ同時に値上がりするケースが大半です。

今回も原油価格の上昇とほぼ同じタイミングで小麦や食用油の価格が上昇しました。それ以外の品目も似たようなものであり、食品については、大半の品目で価格が上がったと考えて差し支えありません。では、なぜ原油価格や食料価格がここまで激しく上昇しているのでしょうか。

その背景となっているのが、?の全世界的な需要の拡大です。今回のインフレについて、多くのメディアは、コロナ危機後の景気回復期待とロシアによるウクライナ侵攻によって価格が上がったと説明しています。

確かに景気回復期待から企業の発注が増え、それが価格上昇の要因となったのは事実ですし、ウクライナ侵攻によって食料不足が懸念されているのも事実ですが、この理屈だけでは、状況を100%説明しているとは言えません。

実は、今回の物価上昇の最大の要因は、全世界的な需要の拡大です。近年、中国を筆頭に東南アジアなど新興国の経済成長が著しく、全世界的な需要は拡大の一途です。社会が豊かになれば、当然の結果としてエネルギー消費は増えます。

また、社会が豊かになると、肉食が増えることは、あらゆる地域で観察される現象であり、実際、中国や東南アジアでは肉の消費量が急増しています。肉の消費が増えると、穀類の消費が増加し、食料全体の需要も大幅に増えます。エネルギーや食料は、工業製品とは異なり、需要が増えたからといって、簡単に生産量を増やすことができません。

全世界の需要拡大は、10年くらい前から顕著となっており、供給が追いつかないリスクはすでに市場関係者の間では認識されていました。全体的にモノの供給が足りない状態だったところに、コロナ危機からの景気回復期待が重なり、一連の価格上昇を引き起こしたのです。

米中対立が与える深刻な影響

この動きに拍車をかけているのが、?の米中対立です。トランプ政権以降、アメリカは中国を敵視する戦略に転換し、米中は事実上の貿易戦争に突入しました。加えて両国は、相手国で生産された工業製品について安全保障上の脅威と見なすようになっており、特定品目については第三国を経由した貿易にも制限を加える意向を示しています。そうなると、米中市場は完全に分断されます。

中国からの輸入に高関税が課された場合、あるいは中国の工業製品が安全保障上の理由から輸入できなくなった場合、アメリカの企業は、(A)高い価格でそのまま中国から仕入れる、(B)中国以外の国からの輸入に切り替える、(C)自国産の製品に切り替える、という選択を迫られます。

中国以外の国で、同レベルの低価格と大量生産を実現できる国は今のところ存在していませんから、(B)を選択すれば確実に価格が上昇します。(C)はどうでしょう。アメリカ内のコストはきわめて高く、価格は上がります。結局、どれを選択しても、価格に上昇圧力がかかるわけです。

両国と取引している日本企業も大きな影響を受けます。たとえば、中国で製造した部品を輸入し、国内で組み立てを行って半完成品をアメリカに輸出しているケースでは、アメリカの判断次第で輸出ができなくなります。逆も成立し、特定のアメリカ製部品を搭載している日本製品を中国に輸出できないケースも出てくるでしょう。

各社が一連の地政学的リスクを回避するには、米中どちらかの市場を捨てるか、サプライチェーンを中国向けとアメリカ向けに分け、二重投資するしかありません。前者は価格が引き上げられ、後者は減価償却が増えてコスト増加要因となります。実際、部品メーカーの村田製作所は、米中対立の激化によってサプライチェーンに対する投資が二重になり、製品コストが上昇するリスクがあると説明しています。

ロシアによるウクライナに侵攻によって、こうした国家間の対立がさらに激しくなると予想されています。世界経済は今後、アメリカ、欧州、中国(ロシアを含む)という3つのブロックに分断され、各国がエゴをむき出しに資源を奪い合う可能性が高くなるでしょう。こうした動きは、確実に物価上昇をもたらします。

世界的な金余りが物価を押し上げる

今回のインフレのダメ押しとなっているのが、?の量的緩和策による全世界的な金余りです。市場に貨幣を大量供給すると、物価には上昇圧力が加わります。各国はリーマン・ショックに対応するため、中央銀行が積極的に国債を購入し、市場にマネーを大量供給する量的緩和策を実施してきました。量的緩和策は、意図的に物価上昇を引き起こして実質金利を下げる政策ですから、当然のことながら、強烈な物価上昇要因となります。

これまで、日本を除く各国は、量的緩和策によってそれなりの景気回復を実現してきました。そのため、物価上昇は大きな問題にはなっていませんでした。確かに物価は上がりましたが、その分だけ経済も成長し、賃金も上がっていたので、消費者は何とか生活を維持することができたのです。

ところが、コロナ危機の発生によって、市場から余ったマネーを回収し、元の状態に戻す金融正常化の作業が遅れ、その間に米中対立や新興国の需要拡大などによって、予想以上にインフレが進行する事態となってしまいました。わが国に至っては、金融を正常化するどころか、依然として量的緩和策を継続中であり、市場には相変わらず大量のマネーが供給されています。

需要の増大に供給が追いつかないなか、全世界的にマネーの回収が進んでいないという状況ですから、世界経済はインフレのマグマがたまりにたまった状態となっています。各国の専門家がインフレに対して警鐘を鳴らしているのは、こうした理由からです。

コストプッシュ・インフレでは説明できない

今回のインフレに対して、一部の専門家は原油価格の上昇が根本的な原因であり、純粋なコストプッシュ・インフレであると説明しています。コストプッシュ・インフレとは、原材料費などコストの上昇が原因で発生するインフレのことです。


しかしながら、ここまでの説明からもおわかりいただけるように、今回のインフレを単なるコスト要因であると捉えると本質を見誤ります。

そもそも経済学の基本的な理屈として、特定の1次産品が値上がりしただけで、経済圏全体の物価が長期にわたって継続的に上昇することはありえません。継続的な物価上昇が続く時にはほぼ100%、マネーの膨張など貨幣的要因が絡み合っています。

今回のインフレは需要拡大と供給制限、そして貨幣の膨張が複雑に絡み合ったものであり、対応も簡単ではないことを理解しておく必要があります。現時点において、世界経済は物価上昇が進んでいるものの、経済成長も続いており、賃金は物価に何とか追いついている状況です。しかし、もし経済成長が鈍化し、物価上昇に賃金が追いつかなくなれば、不景気下のインフレ、スタグフレーションになります。

各国政府はスタグフレーションに陥らないよう、ギリギリで対処しているのが現実です。日本の場合は、これに特殊事情が加わりますから、事態はより深刻です。この日本ならではの事情については次回、解説したいと思います。

(加谷 珪一 : 経済評論家)

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2022-10-11 00:00:00Z
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