割高とされてきた北総線(京成高砂〜印旛日本医大)の運賃を1日に値下げする北総鉄道(千葉県鎌ケ谷市)の室谷正裕社長(66)が産経新聞のインタビューに応じ、値下げの狙いや課題などを語った。
――値下げを迎えた今の心境は
「長らくお待たせしました。いよいよ1日から値下げします。創立50周年の節目に、積年の課題だった高運賃問題で一定の対応ができることは大変ありがたい。多くの皆さまに支えてもらったおかげで、感謝の気持ちでいっぱいです」
――今後については
「値下げして終わるつもりは全然ない。今回の値下げは、これまで高いといわれてきた“宿題返し”的な意味合いに加え、今のままだと鉄道事業は(高齢化などで)じり貧になるので、値下げで若い世代を呼び込んで事業基盤を維持する要素もある。値下げを今後にどう生かすかを真剣に考えないといけないし、沿線を太くするためには県や自治体、NPOや商工会など、いろんな人の力を借りないといけない」
――通学定期券は特に、大幅な値下げに踏み切る
「若い人に移り住んでもらうと、今後何十年もお付き合いが続く。値下げを新たな出発点とし、引き続き安全安心に徹しながら、より快適なサービスを提供する。また、使い勝手を良くするために電車の本数も増やさないといけない。2月のダイヤ改正で増やしたが、秋にも大幅に増やす予定だ」
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――北総鉄道の強みは
「(他社線への乗り入れで)成田空港に直結し、新橋や日本橋といった都心を経て羽田空港にもつながっている。路線特性がとても良く、印西牧の原では戸建て住宅がものすごく売れている。でも、北総エリアが狙い目だということはまだ十分に発信されていない」
――知名度向上が課題だ
「日本一高い北総鉄道って有名だけど、じゃあどこを走っているのと。乗ったことがないし、場所も分からず、印西市や白井市なんてどこにあるのかと。だから知ってもらわないといけない。イベントは繰り返し行い、電車に乗ってもらうきっかけを作り続ける。大きなことはなかなかできないので、日々の営業活動が肝心となり、まさに知恵の出しどころだ」
――社内の雰囲気は
「明るくなった。一方で値下げ後に経営がうまくいかなくなって『助けてください』とは絶対ならないようにと、決意も新たにしている。その意味で今回の決断は重たい」
――旧運輸省職員として日航ジャンボ機墜落事故に、国土交通省では福知山線脱線事故に直面した
「安全こそが最大のサービスで、とことん追求すべきだ。値下げが安全に影響することは絶対にあってはならない。地域のインフラとして、より良い形で機能を果たすため、まずは安全安心な鉄道サービスを将来にわたって提供し続ける」(聞き手 小野晋史)
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2022-10-01 22:00:00Z
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