財務省が31日に発表した9月29~10月27日の為替介入実績は6兆3499億円で、単月の円買い・ドル売り介入として過去最大を更新した。政府・日銀による21日の介入などが表れた。未曽有の円安・ドル高圧力は日米金利差や貿易赤字などの構造要因が背景にある。介入の効果がどこまで続くかは見通せない。
24年ぶりに実施した9月22日分を含めた一連の介入額は9兆1881億円となる。データの残る1991年4月以降の円買い介入の合計(4兆8793億円)を大幅に超えた。
日銀の統計を基に、市場関係者は21日の介入額は過去最大の5兆5000億円規模と推計していた。円は22日未明にかけ一時1ドル=144円台まで7円以上急騰した。一時4円以上円高に振れた24日も6900億~8900億円の円買い介入があったとの観測がある。
財務省が直後に公表した9月22日以外は実施を明らかにしない「覆面介入」だ。21日の介入は関係者が日本経済新聞の取材に実施を認めた。1日単位の介入実績は財務省が四半期ごとに公表する。10~12月分は2023年2月上旬になる。
市場では、円安の進行が一定程度抑えられているとの見方がある。
円安の大きな要因となる日米金利差をみると、金融政策の影響を受けやすい2年債利回りは米国が日本を4.5%ほど上回る。9月22日の前日時点は4%ほどだった。1カ月強で0.5%ほど開いており「本来、円相場は1ドル=150~155円程度で推移していてもおかしくはない」(大和証券の多田出健太氏)。
足元では1ドル=148円前後で、その差が介入の効果ともいえる。介入への警戒感もあり、一方的に円安・ドル高が進むような相場の動きにはひとまず歯止めをかけた。
未曽有の円安圧力、構造要因大きく
もっとも、かつてない円安圧力を生む構造的な要因は変わっていない。介入の効果が持続するかは不透明で、安住できる状況とは到底いえない。
利上げを急ぐ米連邦準備理事会(FRB)に対し、日銀は金融緩和を続ける。黒田東彦総裁は28日の記者会見で「今すぐ金利引き上げとか、(緩和策の)出口が来るとは考えていない」と明言した。日米の金利差は当面続く見通しだ。
資源高と円安による貿易赤字の拡大も円安圧力を強める。輸入決済のための円売り・ドル買い需要を増やすためだ。日本経済研究センターが9月下旬から10月上旬に民間エコノミストの予測を集計したESPフォーキャスト調査によると、22年度の貿易赤字の予測平均は過去最大の16兆1300億円。23年度も12兆8000億円と巨額の赤字が続く。
政府が28日にまとめた総合経済対策の裏付けとなる22年度第2次補正予算案は29.1兆円に膨らむ。多くは国債で賄う。国際通貨基金(IMF)の統計で21年に先進国最悪の国内総生産(GDP)比262.5%に上った政府債務残高がさらに増える。財政への信認が揺らげば円売りに拍車がかかりかねない。
放漫財政や潜在成長率の低さといった経済構造の弱さを放置したまま、円買い介入で対抗するのは一時しのぎにしかならない。これまでで最も長期間の円買い介入は1992年1~8月の8カ月間。構造要因が解消しなければ、今回も長期戦となる可能性がある。
海外からの風当たりが強まる恐れもある。
米財務省は為替操作国の認定にあたり①対米貿易黒字②経常黒字③持続的で一方的な為替介入――の3条件を示している。為替介入は外貨の純購入が過去12カ月のうち8カ月以上に及び、介入額がGDP比2%以上となれば抵触する。日本の場合、11兆円ほどになる。
自国通貨売り・ドル買い介入による通貨安競争を想定した条件だが、円買い・ドル売り介入のひとつの目安になるとの見方も市場にはある。
個人投資家が低成長と低金利が続く日本を見切る動きが出てきた。
海外の株や債券で運用する投資信託は22年4~9月に2兆4000億円近い資金の流入超過となった。世界的な株安・債券安のなかでも、米国など相対的に成長力の高い企業や国に投資しようという投資家が増えている。海外投資のために円をドルに替える需要の拡大も円安を助長する。
個人の外国為替証拠金取引(FX)も活発だ。金融先物取引業協会の店頭FX49社の売買動向によると、9月の円・ドル取引は1098兆円と初めて1000兆円を超えた。他の通貨ペアを含めた9月の全体の売買高も、1398兆円と過去最大になった。円安材料に着目した個人の円売りがかさみ、円安方向への値動きを増幅している。
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2022-10-31 10:02:31Z
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