国内鉄鋼最大手の新日鉄住金は1日、「日本製鉄」に社名を変更した。経営トップに海外経験の豊富な橋本英二氏(63)を起用し、新たな船出を切る。国内の収益改善を優先課題として取り組む一方、需要の増加が見込まれる海外市場への事業拡大を図り、厳しさが増す国際競争に備える構えだ。
「時価総額で世界ナンバーワンを回復し維持していく、そんな強い会社にしたい」。橋本社長は先月、就任に先立ちブルームバーグなど報道陣の共同取材で「グローバル競争が厳しくなっていく中で競争優位性を確立する」と抱負を語った。
米中貿易戦争などによる景気減速で世界的に鉄鋼市況が悪化する「鉄冷え」再来の懸念が高まる一方、世界の粗鋼生産の半分を占める中国では最新鋭の設備を備えた大手企業が台頭、技術力も向上し、高級鋼で勝負してきた日本勢にとってより脅威を感じる存在となっている。こうした環境で、橋本社長は厳しい経営のかじ取りを迫られる。
鉄鋼業界で首位だった同社の時価総額は2016年以降、中国最大手の宝武鋼鉄集団の上場子会社、宝山鋼鉄やアルセロール・ミタル、韓国のポスコに追い越されている。中国政府の過剰設備削減よる市況回復の恩恵を受け海外勢が顕著に業績を伸ばす中で、日本製鉄は精彩を欠く水準にとどまっていることなどが背景。首位の奪還には、業績を回復させ、市場の評価を得ることが急務となる。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の黒坂慶樹シニアアナリストは、同社の利益が近年、本来稼ぐべき水準に達していないのは、一連の設備トラブルによるコスト増や売上減に加え、自動車メーカーなどの国内の顧客に対し適正な値上げができず、「収益の土台となる部分が欠けている」ためだと指摘する。
「作る力」も強化
橋本社長は、経営の重点課題として「売る力」とともに「作る力」の強化にも取り組む考えだ。設備トラブルが続き、計画通りに生産できていない原因は、設備の老朽化や生産現場における急速な世代交代だと分析。対策として、管理手法を見直すほか、個別の事象を全社的に共有し再発防止を図る一方、従来にない規模の投資額や修繕費を設備対策に充てているとしている。
海外事業について橋本氏は、「打つべき手は打ってきている」と述べ、今後は大規模な投資を行うよりも、新たに取り込んだ案件をどう収益に結び付けていくかに注力する方針を示した。一方、慢性的に赤字が続く既存事業については撤退を含めて検討していく。アジア地域や米州などで積極的に海外投資を行い、数多くの拠点があることから、グローバル展開については海外の競合他社よりも優位性があるとしている。
新日鉄住金は12年10月、新日本製鉄と住友金属工業が合併し発足した。橋本氏は今回の社名変更の理由のついて、「日本発祥の製鉄会社として世界で成長する」ためと説明。新日鉄住金は合併後、社名が浸透せず、鉄鋼メーカーと認識されなかったり、「すみきん」を「じゅうきん」と読み間違えられたりすることもあり認知度は低迷していた。
日本製鉄のルーツは明治時代の1901年に操業を始めた官営八幡製鉄所。新社名は、八幡製鉄所などが34年に合併して発足し50年の財閥解体まで続いた「日本製鐵」の復活を思わせるが、同社は同じではないと説明。今回改名した日本製鉄は「にっぽんせいてつ」と読み、「鉄」の字も新字体で表記するのに対し、戦前の社名は「にほんせいてつ」で旧字体の「鐵」を使用していた。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-03-31/PP3WM86JIJUO01
2019-03-31 17:00:00Z
52781641545504
Tidak ada komentar:
Posting Komentar