連載「社長、給料あげますか? 賃上げ税制の現実」
中小企業が賃上げすれば、その額の最大40%を法人税から差し引く――。政府がそんな政策を打ち出しました。税の優遇措置としては破格の水準だそうです。ただ、そもそも中小企業にとっては使いやすい政策なのでしょうか? 社長さんたちのリアルな声を伝えます。
ものづくりの街、大阪府の東大阪市。12月13日、自民党の茂木敏充幹事長と市内の経営者6人とが、テーブルを囲んで話をした。
「車座対話」である。
茂木幹事長は、経営者らに話した。
「下町ボブスレーのようにヨコのつながりが大切だ」
下町ボブスレー。それは、東京都大田区の町工場を中心に技術を結集してボブスレーをつくり、冬の五輪に走らせようというプロジェクトのことだ。
2011年に始まったこのプロジェクトは“日本スゴイ”の証左の一つとして自民党政権がもてはやしてきた。
14年のソチ、18年の平昌。どこの代表チームも、下町ボブスレーのそりを使わなかった。来年の北京で、巻き返しを目指している……。あきらめずにチャレンジすることは、素晴らしい。けれど、10年たって成功するかどうか分からないプロジェクトを見習え、と言ったのである。
そもそも、東大阪の名誉をかけて指摘しておきたい。町工場があつまって力を発揮した先駆者は、09年に打ち上げを成功させている人工衛星「まいど1号」である。これは、東大阪の町工場が集まったプロジェクトだった。下町ボブスレーは、この成功に刺激を受けて始まったのである。
さて、茂木幹事長は、さらに語る。
「これまで見たことないものを生み出してほしい」
「中国の深圳なんかは睡眠時間4時間で新しいものを生み出している。そういう情熱も必要だ」
情熱なしでものづくりをしている町工場なんて、ない。経営者側の意見はこうだ。
「大手企業とのピラミッドの中でやってきた。そんな中で、ピラミッドからの脱却、イノベーション(技術革新)を起こせ、新しいものを、と言われても簡単な話ではない」
そもそも、ピラミッドを町工場が下から支えてきたから自動車ができるのであり、家電ができる。私たちの生活は下請け仕事が支えてくれている。まずは町工場に感謝するのが筋、である。
30分ほどの対話後、茂木幹事長は記者団に言った。
「東大阪の企業は、元気がある。大阪、日本の未来は明るいと思った」
そして、大阪を去った。
このことを言うのを忘れなかった。
「賃上げを積極的にすすめる中小企業については、40%の法人税減税という思い切った措置を取っている」
岸田文雄首相の肝いりで12月に拡充が決まった「賃上げ税制」のことである。
「そんなニンジンに飛びついたら……」
そんな「車座対話」が行わ…
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2021-12-28 09:00:00Z
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