米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が約40億ドル(約5200億円)相当のテスラ株を売却したことが28日、明らかになった。米ツイッター株の買収に向けた資金確保とみられる。ツイッターが同日発表した2022年1~3月期決算は人件費の増加などで、本業のもうけを示す営業損益が赤字に転落した。負債も活用するマスク氏にとって買収後の業績改善は重要になる。
マスク氏が28日に米証券取引委員会(SEC)に提出した報告書によると、26~27日に約440万株のテスラ株を売却した。発行済み株式数の約0.4%に相当する。QUICK・ファクトセットによるとマスク氏は21年末時点でテスラに16.7%を出資していた。
マスク氏は買収に向けて確保した465億ドルの資金のうち、210億ドルについては自己資金で賄うと説明している。自己資金の出どころについて詳細は明らかにしていないが、今回のテスラ株の売却で得た現金を充当する可能性がある。
マスク氏は28日夜、ツイッターの自らのアカウントに「本日以降、テスラ株の売却予定はない」と投稿した。今回の売却だけでは210億ドルの確保には足りないが、テスラ株をさらに売却する意思がないと表明し、需給悪化懸念による株価下落を防ぐ狙いとみられる。
公表済みの利用者数を下方修正
年内に完了を予定する公開買い付けに向けたマスク氏の準備が進んでいることが判明する一方で、ツイッターの28日の決算発表ではコスト管理や経営分析の甘さが露呈した。
新サービス・機能の開発に向けた採用増に伴う人件費の増加などで、22年1~3月期の営業費用は前年同期比35%増の13億2800万ドルに膨らんだ。16%増の12億ドルだった売上高の伸びを上回って費用が増えた結果、営業損益は1億2700万ドルの赤字(前年同期は5200万ドルの黒字)に転落した。事業売却によって純利益は7.5倍の5億1300万ドルだった。
重要な経営指標と位置づける広告を閲覧した1日当たりの平均利用者数(mDAU)は16%増の2億2900万人だった。ツイッターは23年末までにmDAUを3億1500万人に伸ばす目標を掲げる。年平均で20%増やす狙いだが、増加ペースは計画を下回っている。
ツイッターは28日、過去のmDAUの算定ミスがあったとして、19~21年分の公表値を訂正すると発表した。20年10~12月期から21年10~12月期までの5四半期分のみを具体的に開示し、それぞれ全体の1%弱にあたる140万~190万人分を下方修正した。
買収後の人員削減構想も浮上
マスク氏はLBO(借り入れで資金量を増やした買収)を計画する。一部融資ではツイッターの資産や将来キャッシュフローが金融機関からの担保に設定されている。買収後に財務が悪化すれば、融資条件の見直しなどを迫られるおそれがある。
マスク氏は表向きは「経済的なことは気にしていない」と話すが、無策というわけではないようだ。米ブルームバーグ通信は28日、同氏が金融機関に対し、ツイッターのコスト圧縮に向け過去4年で2倍超に膨らんだ人員の削減などを検討していると話したと報じた。
ツイッターは21年に米国で月額2ドル99セントのサブスクリプション(継続課金)型サービス「ブルー」を始めるなど新たな収益源の模索を続けるが、22年1~3月期決算では広告部門の売上高が全体の9割強を占めた。まずは米グーグルや米メタなどの後じんを拝する広告事業の立て直しが急務となる。
自動車業界で時価総額首位のテスラなどを率いるマスク氏の手腕に期待する声が高い一方で、急激な方針転換によるユーザーの離反も懸念されている。株式非公開化で「ネット空間の言論の自由を守る」と息巻く同氏の前途には、多くの難題が横たわる。(シリコンバレー=白石武志、ニューヨーク=堀田隆文)
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2022-04-29 08:57:10Z
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