1日の米金融市場では株式と債券が上昇。連邦公開市場委員会(FOMC)が今月の会合で金利を据え置き、2024年に金融緩和に動くとの観測が広がった。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は利下げ観測へのけん制を試みたが、市場はそれを振り払う格好となった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4594.63 | 26.83 | 0.59% |
ダウ工業株30種平均 | 36245.50 | 294.61 | 0.82% |
ナスダック総合指数 | 14305.03 | 78.81 | 0.55% |
S&P500種株価指数は昨年3月以来の高値に達した。週間ベースでは5週連続上昇。パウエル議長は必要に応じて追加の引き締めを実施する用意が当局にはあるとしつつ、政策は「かなり景気抑制的な領域に入っている」とも述べた。
パウエル議長、FRBは「慎重に」行動-追加引き締めの選択肢維持 (2)
LPLファイナンシャルのチーフ・グローバルストラテジスト、クインシー・クロスビー氏は、米金融当局は11月に「ハト派」転換したとの市場の強い確信が、「より高くより長く」という同当局の主張に対抗する格好となっており、市場は利下げサイクルが遅くとも2024年半ばまでに開始されると考えていると指摘した。
「FOMCのハト派とタカ派の双方ともに政策への『より慎重』なアプローチで見解が一致しているようで、政策は引き続き適切だとの見方を受け入れているが、市場がそれで十分だとみていないのは明らかだ」とクロスビー氏は述べた。
米国債
2年債利回りは一時14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の4.54%を付けた。金利スワップ市場に反映される3月FOMC会合での0.25ポイント利下げ確率が上昇し、5月の利下げは完全に織り込まれた。さらに、来年12月までの利下げ幅は1ポイントを超えるとも予想されている。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.39% | -10.2 | -2.26% |
米10年債利回り | 4.21% | -11.9 | -2.76% |
米2年債利回り | 4.55% | -12.9 | -2.76% |
米東部時間 | 16時46分 |
ブック・リポートの著者、ピーター・ブックバー氏は「パウエル議長は押し返そうと試みたが、その効果は米国債には『ほんの数秒』しか続かなかった」と指摘。「利上げは終了しており、来年には利下げが実施されると市場が安易に考えているのに対し、今回のスピーチは市場をけん制し続けようと意図したものだと考える。説得力がなかったため、市場は揺らいでいない」と述べた。
インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トレス氏は「市場参加者はパウエル氏を信じていない」と指摘。「同氏がハト派姿勢を強めつつあり、次回のFOMC会合でそうした見方が反映されるとの期待から、恐らく今回の講演は材料視されなかった。今後2週間は経済指標で市場のボラティリティーが高まる可能性がある」と話した。
米供給管理協会(ISM)が発表した11月の製造業総合景況指数は13カ月連続で縮小した。これほど長く縮小圏にとどまるのは、リセッション(景気後退)を誘発したITバブル崩壊後以来だ。高金利が製造業に引き続き打撃を与えている。シカゴ連銀のグールズビー総裁は、物価圧力が弱まりつつあることを示す最新のデータを評価し、インフレ率は当局の2%目標に戻る軌道上になおあるとの自信を示した。
米ISM製造業指数、13カ月連続の縮小圏-高金利の打撃続く (2)
シカゴ連銀総裁、インフレ低下が3%で停滞しているとの証拠一切ない
外為
外国為替市場ではドルが下落。債券市場で来年の米利下げ観測が強まったことから、ドル売りが優勢になった。
対円では1ドル=147円を割り込み、一時146円66銭を付けた。ユーロはパウエル氏の発言後、対ドルでの下げを埋める場面もあった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1234.11 | -4.79 | -0.39% |
ドル/円 | ¥146.84 | -¥1.36 | -0.92% |
ユーロ/ドル | $1.0880 | -$0.0008 | -0.07% |
米東部時間 | 16時46分 |
クレディ・アグリコルのG10為替戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「パウエル氏は市場の利下げ期待を押し返そうとしているが、私としては発言が以前よりもバランスが取れていると認識せずにはいられなかった」とリポートで指摘。「パウエル氏は利下げをもはや頭ごなしに否定するのではなく、むしろ今はその時期ではないと示唆している」と記した。
その上で、「サンタクロースとなったパウエル氏は『FRBプット』の復活を示唆したかもしれない」とし、「リスク資産にとっては良いことだが、ドルにとってはそれほど良いことではない」と続けた。
原油
ニューヨーク原油相場は大幅続落。週間では6週連続安となった。石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成される「OPECプラス」が前日に減産合意を発表したが、膨張する供給に対する市場の不安を鎮めるには至らなかった。
ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物はバレル当たり74ドルに接近して引けた。前日は2.4%下げていた。OPECプラスは日量約90万バレルの減産を発表したが、自主的な措置にとどまり、すでにアンゴラは生産枠を拒否している。米国では稼働中の石油リグ(掘削装置)が5基増え、既に記録水準に達している国内の生産が増加を継続していることを示唆した。
OPECプラスが「自主的な」追加減産、市場は懐疑的-原油下落 (3)
TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は「生産枠順守に関し市場は心配し過ぎている可能性があるが、OPECプラスからの意思伝達が貧弱なことは前日の市場で原油が下げた要因となった」と説明。「しかしながら、最終的に減産合意は向こう数カ月に予想される供給過剰を回避する上で十分となる可能性があるとわれわれはみている」と述べた。
バンダ・インサイツの創業者バンダナ・ハリ氏はOPECプラスの結果を「混乱を招く雑な仕事」と表現。「結局すべては自主的な減産だ。失望されたのはこれが一因だ」と説明し、1-3月期に日量90万バレルの追加減産が実行されるかどうか、現時点では分からないと述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は前日比1.89ドル(2.5%)安い1バレル=74.07ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は2.4%下げて78.88ドル。
金
ニューヨーク金相場は反発。スポット価格は最高値水準に再び接近した。パウエルFRB議長が政策金利について、「景気抑制的な領域に深く入った」と述べたことに反応した。
金融市場はパウエル氏の発言をハト派的と受け止め、米国債利回りとドルは下げ幅を拡大した。これに支えられた金相場は2020年8月に記録した過去最高値まで1ドル未満に接近。週間では3週連続高となった。金先物価格は過去最高値を更新した。
投資家は来年前半の利下げ観測を払拭しようとしたパウエル氏の発言を重視せず。金利スワップ市場は3月利下げの確率を60%余りと織り込んだ。金融緩和は通常、利息を生まない金投資にプラスに働く。
金は10月上旬から12%余り上昇。買いはイスラエルとハマスの戦争が始まったことがきっかけだったが、それ以降は来年早期にも金融政策が緩和に転じるとの見方で買いが続くようになった。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時5分現在、前日比35.21ドル(1.7%)高い1オンス=2071.62ドル。週間では3.3%の値上がり。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は32.50ドル(1.6%)上昇の2089.70ドル。
原題:Bonds Up as Powell Pushback Lasts ‘A Few Seconds’: Markets Wrap(抜粋)
Dollar Weaker After Powell Remarks; Euro Pares Loss: Inside G-10(抜粋)
Even OPEC Output Cuts Are Powerless to Stop Oil’s Six-Week Slide(抜粋)
Spot Gold Moves Closer to Record High After Powell Rate Remarks(抜粋)
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2023-12-01 21:50:00Z
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